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『顔のない軍隊』(エベリオ・ロセーロ 八重樫克彦・由貴子訳 作品社)

2011.02.24(Thu)

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顔のない軍隊顔のない軍隊
(2011/01/25)
エベリオ・ロセーロ

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■現在、中東各地に民衆の蜂起が勃発し、独裁政権がドミノ倒しのように崩壊している。独裁者vs民衆という構図は、非常にわかりやすい。打倒すべきターゲットがはっきりしている。しかし、50年以上にわたって混乱が続くという、コロンビアの場合はどうだろう。政府軍、右派民兵、左翼ゲリラ、さらに麻薬密売組織が複雑に絡み合い、血を血で洗う抗争を繰り返してきたという。武装集団同士、ときには同盟を結び、ときには反目して戦闘状態に入ったりと、賽の目のように変わる戦闘状況は、複雑怪奇で分かりづらい。
この作品は、そんなコロンビア特有の政治的混沌と倦むことのない紛争を、戦場となった村人の素朴な目を通して描いた作品だ。さらに、結論めいたことを書いてしまうと、ここでは、中東のような独裁者打倒に向けたエネルギーなど、望むべくもないようだ。きっと、世界にはコロンビアのような国がいくつもあって、出口のない鬱屈のみがマグマのようにたまっていく、そんな国も多いのだろう。それからすると、危険は伴うにしても革命のようなカタルシスを体験できる国は、ある意味、幸せなのかもしれない。



■出だしは、ゆるくエロチック、とぼけたユーモアに包まれて物語は始まる。こんな具合。

「ブラジル人のかみさん、スマートなヘラルディーナが日差しを求めて素っ裸で出てきてさ。テラスに敷いた赤い花柄マットにうつぶせになって日光浴を始める。隣のパンヤの木陰じゃ、ブラジル人のだんなの大きな手が、なかなかの腕前でギターをかき鳴らしていてさ。けだるく穏やかな歌声がコンゴウインコの甘いさえずりと相まって聞こえる。テラスでのひとときはそんなふうに、太陽と音楽に包まれながら過ぎていくんだ。」


■この、ブラジル人のかみさん・ヘラルディーナの裸を隣の庭から盗み見ているのが、作品の語り手にして主人公のイスマエル。当年70歳で、村人たちのほとんどが彼の教え子という元教師。ちょっとエッチで、脳天気な年老いた男の視線によってこの作品は紡がれていく。
実は、この出だしのゆるさが、村への武装組織の進入から転調し、どんどんタイトな空気になっていく。お気楽でちょっとエッチなイスマエルが、暴力に蹂躙された村とともに、じりじりと追い詰められていくのだ。
イスマエルの天然キャラと、村に忍び寄る残忍で不気味な暴力の影がなんとも対照的で、さらに迫力と臨場感をもって迫ってくる。


■軍隊の侵入とともに、愚痴を言い合い長年連れ添ってきた妻が行方不明になる。その妻を探して、村の中をさまよい歩くイスマエル。左膝の痛みを治してくれた骨接ぎ医者で百歳になろうかという、クラウディノ先生は虐殺される。腕のいい外科医で仲の良かったオルドゥス氏も虐殺される。あるものは殺され、あるものは誘拐され、あるものは村を捨てて去って行く。みるみる活気を失い、馴染みの村人たちも姿を消していく。さらに、政府軍が立ち去ると、本格的に武装組織の村への侵入が始まる。それまで、村に居残っていたものも次々と村を捨てて逃げていく。そんななか、イスマエルは、妻のオルティアを待ち続けるために最後の最後まで村に居残る。
しかし、その武装組織が一体どんな組織なのか、最後まで明らかにされない。左翼ゲリラなのか、それとも、右翼民兵組織なのか、はたまた、麻薬密売組織なのか。戦場となった村では、そんな政治地図などあまり関係なさそうだ。


■状況が悪化していく村、疲れ果て混乱していくイスマエル。戦闘というものを当事者から、内側から見るとそこにあるのは、恐怖と混沌である。誰と誰が戦い、戦況がどうなっているのか、そんな客観的な分析とは無縁な場所なのだ。コロンビアのように様々な武装勢力が覇を競っている中では、どんな軍隊であれ民衆に牙をむいてくる可能性がある。解放してくれるような軍隊などありはしない。まさに”暴力装置”としての本質がむきだしになった「顔のない軍隊」のみが存在しているかのようだ。


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