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『アイルランド・ストーリーズ』(ウィリアム・トレヴァー 栩木伸明訳 国書刊行会)

2011.02.18(Fri)

『海外文学』 Comment(2)Trackback(0)

アイルランド・ストーリーズアイルランド・ストーリーズ
(2010/08/27)
ウィリアム・トレヴァー

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■ウイリアム・トレヴァーの『アイルランド・ストーリーズ』(栩木 伸明・国書刊行会)を読み終えた。「現役世界最高の短編作家」といういかにも大仰な呼称が、誇張でもなんでもなくごくごく当たり前の事実として、素直にストンと胸に落ちる。
1928年生まれで1950年代後半にデビューということだから、80歳をこえて現役、キャリアはすでに50年以上ということになる。日本では、2007年に刊行された『聖母の贈り物』(国書刊行会)以降、ぼちぼちと翻訳が出るようになり、08年に『密会』(新潮社クレスト文庫)、09年に『アフターレイン』(彩流社)、そして10年の『アイルランド・ストーリーズ』と、ここ数年で矢継ぎ早に作品が刊行されている。
こと日本においては、晩年も晩年、最晩年になってやっと小さなスポットがあたりはじめたというところ。実際、作家の村上春樹をはじめ英文学者の若島正さんや、評論家の豊崎由美さんなども大絶賛で、日本においても、これまでの不遇を挽回すべく、ちょっとした翻訳刊行ブームが、しばらく続くのではないだろうか。


■私は、この『アイルランド・ストーリーズ』で初めてこの人の作品に触れることができたわけだが、この素晴らしさは、一体何に由来するのだろう。私など、ただただ圧倒されるばかりなのだが、その凄さを説明しろと言われると、なかなか難しい。説明したとたん、大切なものを取り逃がしたような気がして。まあ、文学作品は押し並べてそうなんだけど、あらすじを述べてもその作品の凄さを説明したことにはならないし。例えば、村上春樹は、こんな風に述べている。


「彼の小説の特徴は、無駄のない的確でみずみずしい描写と、 設定された人物像の揺らぎない精密さ、 ナイフのように鋭くはあるけれど同時に不思議な優しさを含んだ小説的視線にある。」


確かにそうなんだけど、これでトレヴァー作品の良さが伝わるだろうか。的確ではあるんだろうけど、あまりにも抽象的。これで、トレヴァーを読む気になるような人がいるのだろうか。もっと、この人特有の際だった良さがあるように思うのだ。しかし、それって一体何なのか。


■私はトレヴァーは、過酷な運命、酷い人生に抗い、立ち向かうような人物を描くのではなく、むしろそれを静かに受け入れていく、弱い立場の人々を好んで描いているように思う。そして、それはキリスト教というより、仏教の世界観に近いようにも思う。それは、あまりおおっぴらに広がることはいないものの、虐げられてきた人々の隠れた叡智の一つだとも思う。
こんなことを書くと、まるで負け犬ような世界観ととらえられかねないが、むしろ逆で、実は、恐ろしく勇気のいることではないか。困難で見たくもない現実、それと向き合い、逃げずに受け入れていく。こちらの方が、よほど大変なことではないか。
この人の作品の底に潜むある種ひんやりした諦念のようなもの、その覚悟の重さがずっしり読者の胸に響くように思うのだ。同時に、そこにこそリアルで小さな灯りが、ほのかにかいま見えるような気もする。


■納められた12の短編、どれも好きなのだが、とりわけ、年老いた女教師を主人公に、内戦の悲劇がふつふつと迫ってくる「アトラクタ」が鮮烈だった。とにかく、こんな本に巡り会えたことにただただ感謝。ひとつだけ、『アイルランド・ストーリーズ』というタイトルなんだが、なんかもうひとひねりあっても良かったのでは。


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コメント
なかなか案内サイトすら作れず、告知できなかったのですが、二日前になってサイトを作りました。前にお話しいていた、『俺俺』を題材にした勉強会です。お時間があれば、ぜひぜひ。
古川岳志 2011.03.03 19:45 編集
コメントを頂いていたんですね、気づきませんでした。メールの方は、読ませてもらっていたんですが。明日なんですね。実は、『俺俺』読んでいなくて、しかも、明日はこちらの方も「本のオフ会」でして。こんなに興味深い試みが、成功されることを祈っています。本当に申し訳ない。

PS 微力ながら、TWITTER上では、情報を流しておきました。
gatemouth 2011.03.04 18:51 編集
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