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『切りとれ、あの祈る手を <本>と<革命>をめぐる五つの夜話』(佐々木中・河出書房新社)

2011.02.15(Tue)

『本を巡る本』 Comment(0)Trackback(0)

切りとれ、あの祈る手を---〈本〉と〈革命〉をめぐる五つの夜話切りとれ、あの祈る手を---〈本〉と〈革命〉をめぐる五つの夜話
(2010/10/21)
佐々木 中

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■先日の本のオフ会、テクストは『切りとれ、あの祈る手を <本>と<革命>をめぐる五つの夜話』。思想系の本の割には読みやすい。革命運動のアジテーターのような断定的な物言い、さらに文章に芸があるというのか、文学的、それもちょっと私小説が入ったような。多分、新たな文体の創造を目指して意識的に書いているのだろうと思う。なんといっても、著者の主張の眼目は、<読み>、<書き変える>ことによる革命であるのだから。例えばこんな表現。


◇「ゆるゆると夏の宵のほのぬるい大気が身じろぎするなか、駅からここまで歩いてきました。外ではまだ油蝉がきりきりと鳴いていてね。蝉とつくつく法師ををひっくるめて寒蝉、つまり初秋の蝉と呼ぶそうですが、あの声が遙かに聞こえ出すと逆に夏本番という感じがして。」


■なかなか文学的でしょう。こういう表現が、各章のはじめにさりげなく挿入される。これだけで、なんか小説を読んでいるような錯覚にとらわれる。ただ、今回、読書会ではこれがだんだん鼻についてくる、という感想も多かった。私も確かにそんな感じがしないでもないが、それより、後半部の「中世解釈者革命」の話や、「文学」「世界」をめぐる終末思想批判みたいなものがおもしろかったので、まあ、目をつぶります。それより、著者の新たな表現への勇気あるチャレンジこそ評価したい。


■で、ここから本題なのですが。普通われわれ世代だと、革命というと社会主義革命を想起します。マルクスとかレーニンとか。そして、それは彼らの教理によると暴力革命の肯定ということになります。しかし、この本では、暴力革命でも社会主義革命でもない、通常では革命の範疇に入らないとされる、「中世解釈者革命」と「大革命」という二つの革命ををとりわけ重視している。
「大革命」というのは、いわゆるルターの宗教改革と呼ばれるもので、私なども全然詳しくは知らないんだけれど、「宗教改革」という名前だけで、「ああ、あれね」という感じで、なんとなくわかったような気になる。しかし、「中世解釈者革命」というのは全くの初耳。ネットで調べても全然出てこない。この本は、というより佐々木さんは、ルジャンドルの歴史観に全面的に依拠しながら論を進めており、そのルジャンドルの特有の用語というか概念になるんだろうと思う。
しかも、実に地味な革命らしい。表舞台で華々しく繰り広げられた革命というより、舞台裏でひっそりと進行した革命というイメージだ。表舞台では、この「中世解釈者革命」が進行していた当時、「カノッサの屈辱」や「叙任権闘争」など教会と封建領主による諍いが活発化していた。
その裏で、それまでの歴史に深い深い断絶を刻み、現在まで続く世界の「初期設定」とも言える革命がひっそりと進行していた。


■それにしても、この「中世解釈者革命」って「具体的にどんな革命なの?」ということだが、要するに教会法の全面的書き変えの作業ということのようだ。つまり、教会法に精緻なローマ法の体系を取り入れることによって、実証的な科学にまで仕立て上げたという。
このときまでローマ法は、6世紀来、ほとんど顧みられることなくうち捨てられていた。それが、十一世紀末ピサの図書館の片隅で『ローマ法大全』が発見される。この法典は、それまで理解不能なものとされ、誰ひとり顧みるものはいなかったというしろものである。
先ほども触れたように、時代が時代でもめ事が絶えなかった。封建領主をも納得せざるを得ない、権威ある、そして精緻なルールが必要とされていたのだろう。以来、前代未聞の規模で、「読み」、「書き変える」、作業が開始される。すなわち、ローマ法の教会法への注入という作業である。
教会とはキリスト教社会全体のことであり、教会法とはその社会全体を統括する法であった。そして、この「中世解釈者革命」による中世キリスト教共同体の成立こそが、近代国家の原型に当たる。百年以上にわたる、地を這うような地道な作業によって、法は「データベース」化され、「検索」できるよう鍛え上げられた。つまり、人間を統治する道具が「法」という「情報」のみになったことを意味する。
また、資本主義的生産様式の萌芽もこの時代、すなわち十一世紀から十二世紀にかけての段階で成長を遂げようとしていた。あいにく、続く時代のペストの流行や、百年戦争によって、一頓挫するわけだが。近代というにふさわしいツールが、すでにこの「中世解釈者革命」によってもたらされたわけだ。


■以降、現在まで「中世解釈者革命」によって「初期設定」された枠組みの中で、われわれは生きているという、なんともスケールのでかい話。そんじょそこらの革命なんぞ足下にも及ばない。「中世解釈者革命」が「無比」の革命たるゆえんである。しかし、こんなこと初めて知ったなあ。これって、もっと常識になってしかるべきでは、などと思ってしまう。しかし一方で、マルクスのいわゆる唯物史観でいうと、生産様式こそが土台であり時代を画期するもので、法や政治などはその土台に上に乗った上部構造にすぎないということになる。ルジャンドルが反動のように見なされているという話がどこかで出てくるが、このようなマルクスとの世界観との違いが、彼を反動のように見てしまう基盤になっているのかもしれない。
それは置いておいて、とにかく、かくも古くさい枠組みの中でわれわれは生きているというのはわかった。それにしても革命なんて本当に起こるの?そりゃ、うんざりするほど問題を抱え、その中で右往左往しながら生きていますよ、人間は。しかし、それなりに何とかやっていくんじゃないの。これまでもそうだったように。私なんか、特に根拠もなくそう思ってしまう。しかし、思いもよらぬ方向から、妙に説得力のある論で迫ってくるのがこの本の最終章。


■こんな話です。地球上では、今まで五回に渡る大絶滅、つまり生物種が死に絶えるような事態が五回起こったという。オルドビス紀、デボン紀、ペルム紀(二畳紀)、三畳紀、白亜紀、これを「ビッグ・ファイブ」というらしい。そんなこんなで、今まで存在した生物種四〇〇億以上のうち、99.9%が絶滅しているらしい。現在残っている生物種は、四千万種でたったの0.1%が生存しているに過ぎない。そして、個々の生物種が生存する寿命がだいたい四〇〇万年ほど。われわれホモサピエンスが生まれて二十万年。これを人の年齢にたとえるなら、四〇〇万年を人の八十歳の老人とすると、二十万年というのは四歳児に当たる。つまりわれわれ人類は四歳の幼稚園児というこになる。ある意味、ませこけた幼稚園児かもしれないが、それにしても、子どもというより幼児である。人生八十年とすると、あと、とてつもない年月が待ち受けている。であるなら、この先大きな大きなライフ・イベントがいくつもあるのが当然、というか当たり前。ない方がおかしい。
こう考えてくると、大きな大きなライフ・イベント、つまり革命のような激動が起こるのは、ある種必定のように思えてくる。いや、革命はもう絶対起こる。いやでも起こるでしょ。


■この本では、革命の本体、実態というのは、暴力ではなく「テクストの書き変え」としている。まず、「テクストの書き変え」が先行する、暴力やら主権やら政治というのは二の次、というのがこの本の主張である。さらにいうと、「テクスト書き変え」をアート全般にまで広げている。音楽やダンス、ファッションから日常の挙措に至るまで。そのような私たちの生にまつわる振る舞い、そのものの書き変えこそが、革命を前に進めることになるという。


■なかなかおもしろい本だと思う。ただ、情報というものを酷く悪者扱いしているようだが、現在の情報革命の進展も半端ないスピードとスケールを伴っている。それこそ、有史以来ともいえるのではないだろうか?エジプトで起こった独裁政権打倒の運動も、情報革命の威力の一端を示してはいないか。であるなら、携帯電話やネットをはじめとするパーソナル・レベルの情報革命の先に、何かが生まれてくるという可能性は大いにありうる話だろう。


次回「本のオフ会」

■<日時> 3月5日(土) PM6:30~

■<テクスト> 『壁』(安部公房 新潮文庫)


壁 (新潮文庫)壁 (新潮文庫)
(1969/05)
安部 公房

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