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『チボの狂宴』(マリオ・バルガス・リョサ 八重樫克彦・由貴子訳 作品社)

2011.01.04(Tue)

『海外文学』 Comment(2)Trackback(0)

チボの狂宴チボの狂宴
(2010/12/25)
マリオ・バルガス=リョサ

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明けましておめでとうございます!
前回の投稿が既に去年のことなんですね。一ヶ月弱も放置していました。今年は、もっとコンスタントな投稿を目指します。本年もどうぞよろしくお願いします。


■ノーベル文学賞受賞作家、リョサの日本における待望の新訳小説。去年、『嘘から出た誠』という文学論が2月に出たものの、小説としては、2008年に出版された『楽園への道』以来の新訳刊行となる。そして、その期待にたがわず素晴らしい読書体験を提供してくれる。史実とフィクションの巧みな融合、時間と空間の自由な往来、そして様々な立場の人々の視点を借りたポリフォニックな語り。まさに円熟の境地に達した著者の自在の筆致。これまでのキャリアの中で培ってきた、様々なテクニックが駆使されている。


■物語は、1930年から1961年まで、31年間にわたってドミニカ共和国を独裁的に統治してきたラファエル・レオニダス・トゥルヒーリョ・モリナを中心に、彼に翻弄され操られてきた人々や社会を描いたものだ。強烈なキャラクターの独裁者トゥルヒーリョが、いかに多くの人々の人生に深い影を落としていったか。なぜ、多くの人々がいとも簡単に彼の術中にはまり、滑稽なほど忠実な犬になりはてたのか?
リョサは、独裁者トゥルヒーリョの他者を懐柔する巧みな術策に強い興味を覚え、そこに、のちにラテンアメリカ諸国にはびこることになる、数々の独裁政権の謎を解く鍵があるのではないか、と考えたという。


■この小説は、時間軸に沿って歴史ロマン風にトゥルヒーリョ時代を描いていくという手法はとっていない。トゥルヒーリョ暗殺の一日を中心に、彼と関わりのあった様々な人々の視点を通して、独裁者の時代の政治や社会の全体像が浮かび上がってくるという仕掛けだ。
ふとしたことから、トゥルヒーリョの不興をかい政権の中枢から排除される上院議長アグスティン・カブラル、そしてその娘ウラニータ。かって、トゥルヒーリョから様々な辱めや虐待を受け、暗殺を決意するに至る実行グループ。独裁者の恐ろしさを骨身にしみてわかっているのは、独裁者の身近にいる政権中枢の一握りのグループである。彼らを冷徹にコントロールしていく一方、忍び寄る老いによって自身の肉体は徐々にコントロールのたがが外れていく。その恐怖と不快に身をよじらせる独裁者。他者はコントロールできても、肝心の自分の肉体が反乱を起こすという皮肉。


■前半は、トゥルヒーリョ暗殺に向け静かに物語が起動し、徐々に緊迫感が高まっていくのだが、これがトゥルヒーリョ暗殺以降の後半部になるとその緊迫感が沸点に達し、ねじ切れたようにストーリーが転がり出す。トゥルヒーリョ亡き後、磁力と方向性を失った政権内部の疑心暗鬼、そして権力奪取のシーソーゲーム。暗殺実行グループの行く末。実は暗殺成功後のドタバタ、決してスムースには進行しない権力移行のダッチロールこそが、この小説に深みと醍醐味を与えているように思う。独裁者による恐怖政治に洗脳された国は、その呪縛から解き放たれるのに時間がかかるのだ。そのタイムラグが、多くの人々に悲惨な結末をもたらす。


また、失脚させられた父親が名誉回復のためにトゥルヒーリョに差し出されることになったウラニータが、三十五年ぶりに訪れた叔母の家で、彼女の身に起こったことを洗いざらい語るシーンも心揺さぶられる。全てを語ることによって、徐々に心を開いていく彼女の姿は、傷ついたドミニカ共和国がとてつもなく長い時間をかけ、立ち直っていく過程とも重なる。


■リョサの本は、今年もう一冊作品社から刊行されるそうだ。2006年に刊行された『悪い娘の悪戯』。こちらは、「限りなく著者に近いと思しき主人公と、あるひとりの女性との四十年に及ぶ愛の軌跡を描いた」作品らしい。なんと恋愛小説っぽいではないか。なんとも楽しみである。


□「本のオフ会」お知らせ

●1月5日(水) PM6;30~  ゲイトマウス・カフェ

●「2010 読んだ本ベスト3」 恒例のベスト3発表です。

●お気軽にご参加を!


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コメント
八子さん、あけましておめでとうございます!
本年もよろしくです♪

「本のオフ会」、参加したかったのですが、残念ながらもう終わってました…。
近々、お店に行きたいと思います。よろしく。
河崎直人 2011.01.06 17:44 編集
河崎様
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
そうか、河崎さんに来ていただいたら良かったのに、残念、無念。
次回は、2月4日(金)『切り取れ、あの祈る手を』(佐々木中)です、良かったら是非。

近々、来店していただけとか、楽しみにお待ちしています。
gatemouth 2011.01.06 20:44 編集
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吹田の関大前で、「ゲートマウス」という小さなカフェを営業しています。
「ゲートマウス」は、「本が楽しめる、ミュージック・カフェ」、もしくは「音楽が楽しめる、ブックカフェ」といったイメージの店です。勿論、フードやドリンクも充実。是非お気軽にお立ち寄りください。日曜、祭日は休業。

吹田市千里山東1-11-16
TEL 06-6387-4690
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