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『メイソン&ディクソン』(トマス・ピンチョン 柴田元幸訳 新潮社)

2010.10.03(Sun)

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トマス・ピンチョン全小説 メイスン&ディクスン(上) (Thomas Pynchon Complete Collection)トマス・ピンチョン全小説 メイスン&ディクスン(上) (Thomas Pynchon Complete Collection)
(2010/06/30)
トマス・ピンチョン

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■夏休み、二月ほどかけてメイソンとディクソンの珍道中さながら、他の本にも手を出したり寄り道しながら、どうにかこうにか読み終えた。20年の歳月をかけて造り込まれた世界は高密度にして精細、恐ろしく濃密な世界。
この小説は、アメリカの北部と南部を隔てる境界線を画定したメイソンとディクソンによる、1763年から1767年にかけての測量行を描いたものだ。独立戦争のきっかけとなる印紙条例が発効されたさなか、国家としての輪郭が朧に浮き上がってくる時代が背景である。同時にイギリスを震源とした産業革命がまさに始まろうとしていた頃の話でもある。こう書くと、歴史ロマンの香りがするが、勿論、そのような正統歴史小説ではない。あくまでピンチョンによる、荒唐無稽にデフォルメされたもう一つのアメリカ史である。
今でこそ、がたつきばかりが目立ち、あちこちひび割れの広がる疲弊国家のようだが、つい数年前までは唯一の「帝国」と称されたアメリカ。かってここは植民地であり、古い「帝国」によるぶんどり合戦の舞台でもあったわけだ。そのような近代と現代の狭間において、古いものと新しいもの、理性的なものと非合理なもの、怪しげな宗教や暴力的な収奪、さらには異文化と異人種の混入等、形の定まらないごった煮状態のアメリカが浮かび上がってくる。


■しかしながら、なにはともあれ、メイソンとディクソンの二人である。亡くなった妻のことが忘れられず、ちょっと鬱っぽく暗いメイソン、そして酒飲みで女好き、お調子者のディクソン、陰と陽、好対照の二人が織りなす珍道中。背景や時代はどうあれ、この二人が道中遭遇する事件はどれも奇想天外で面白い。喋る博学犬、人造鴨、「痺エイ」のフェリーぺ、建国の父フランクリンによるライデン瓶やグラスハーモニカのショー、謎の中国人風水士、最後の方では、サミュエル・ジョンソンとその伝記作者ボズウェルまで登場させている。もちろん、洒落やユーモア、言葉遊びをたっぷりまぶして。


■ただし、前作の『ヴァインランド』に比べると、読み通すのに骨が折れる。上に挙げたような、潤沢なエピソードの数々を繋ぐジョイントの部分がやっかいで、道に迷うこともしばしば。ジョイント部分というのは解説であったり、背景説明であったり、いわば小説のガイド役とも言えるようなパートになると思うのだが、それがガイドになってなくて逆にこんがらがってしまう。
そこへ持ってきて、例の過剰なまでの饒舌ぶり。その饒舌な語りが混乱に拍車をかける。サービス精神が旺盛なのか、読者を煙に巻いてほくそ笑むペダンティックな皮肉屋なのか、多分両方だろうと思うが、とにかくイライラさせられることが多々ある。
とはいうものの、この饒舌な語りこそピンチョンの魅力であり、ピンチョンをピンチョンたらしめている作家の核、あるいは性のようなものでもある。彼は、思い浮かんだアイデアを片っ端からメモするというメモ魔らしいが、隙間なく埋め尽くされ、気ままとも思えるような喋くりネタの細部も、実は、引き出しにストックされ、ねかされていたアイデアなのだろう。ある意味、計算され尽くした饒舌というのか。


■とまあ、『メイソン&ディクソン』にはまっているうちに、『全小説』の第二回配本『逆光』(上下)が出たようだ。これまた、『メイソン&ディクソン』を超えるヴォリュームで、上下巻合わせて1700ページを超えるという。二巻重ねると、ほぼ立方体になるなんていう話も、当然ながらお値段もそれなり。すぐに読めるかどうかは分からないが、やっぱり買うかな。なんといっても、『メイソン&ディクソン』、装幀が素晴らしすぎた。こういう装幀の本は、やっぱり所有したくなる。既にちらほら出回っている書評の評判も悪くなさそうだし。
『本の雑誌』今月号に大森望さんの評が掲載されるようだ。



トマス・ピンチョン全小説 メイスン&ディクスン(下) (Thomas Pynchon Complete Collection)トマス・ピンチョン全小説 メイスン&ディクスン(下) (Thomas Pynchon Complete Collection)
(2010/06/30)
トマス・ピンチョン

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