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「ポストモダンの共産主義」 (スラヴォイ・ジジェク ちくま新書)

2010.08.04(Wed)

『政治・社会・経済』 Comment(0)Trackback(0)

ポストモダンの共産主義 はじめは悲劇として、二度めは笑劇として (ちくま新書)ポストモダンの共産主義 はじめは悲劇として、二度めは笑劇として (ちくま新書)
(2010/07/07)
スラヴォイ・ジジェク

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■ジジェクの本を初めて読む。面白い。タイトルからも分かるように、この人は当然ながらコミュニストなのだが、かっての左翼文献にありがちな硬直性や教条主義とは無縁で、毒のあるユーモアで資本主義の痛いところを突いていく。なるほど、タイトルの通り「ポストモダンの共産主義」そのもの。
社会主義が崩壊した90年代、フランシス・フクヤマが主張した「歴史の終わり」のユートピアが広く浸透し、資本主義は史上最強のシステムという、脳天気な言説が人々の心をとらえた。 正真正銘「大きな物語」の終わりが、やって来たかのように思われたのである。しかし、実際のところ「大きな物語」など全然終わっていなかった。そのことを思い知らされたのが、ゼロ年代に入って起こった二つの出来事だった。ちなみに、サブタイトルの「はじめは悲劇として、二度目は笑劇として」が、この二つの出来事に由来しているのはいうまでもない。

○「かくして、一九九〇年代にフクヤマが示したユートピアは二度死ななければならなかったようだ。つまり9.11によって、リベラル民主主義の政治ユートピアは崩壊したが、グローバル市場資本主義の経済ユートピアは揺るぎはしなかった。二〇〇八年の金融大崩壊に歴史的意義があるとすれば、それはフクヤマが夢見た経済ユートピアの終焉のしるしであるということだ。」


■とはいうものの、資本主義が危機的状況にあることは分かるにしても、そのオルタナティブがコミュニズムというのは、あまりにも楽観的というか無理があるのではないだろうか。資本主義の枠内での改良ではこの危機を乗り切れないものなのか?この間の経済危機に直面し、グローバリズム資本主義が、生き延びるためには、


○「コミュニタリアニズムやポピュリズム、アジア的価値観を持つ資本主義などの形態を装った、ある種の社会主義を再創造するしかない。」


■オバマ政権や日本の民主党政権の政策に対し、右派ポピュリストたちから盛んに「社会主義」というレッテル張りが行われているが、これはある意味、正しいのかも知れない。実際、銀行を国有化したり、GMを国有化しようというのは、資本主義の教理からは著しく逸脱した社会主義的政策そのものだ。グローバル資本主義の生き残りをかけた最終秘密兵器が、国家の社会主義化であるというアイロニカルな現実。ただし、ことここに至っても、日本においては、新自由主義の亡霊が闊歩しており世界の現実とは全くずれまくっている。


○「金融システムの「社会主義化」が資本主義を救うために役立つならば認められるというのは、究極の皮肉である。社会主義は悪ーのはずが、ただし、資本主義の安定に資する場合に限り悪ではないということだ。」


■つまるところ、部分的な社会主義化によって資本主義の延命を図ろうというわけだが、それでは、世界を覆う根本的な危機を回避することは出来ないという。ジジェクは、コミュニズム的実践に移らざるを得ない契機として、「グローバル資本主義の際限なき再生産を妨げるような強力な敵対性」の存在を指摘する。資本主義に内在するこの「敵対性」によって、世界そのものが滅亡の縁に立たされるというわけだ。そのような敵対性とは、


○「①迫り来る環境破壊の脅威。②いわゆる知的所有権に関連した知的財産についての不適切な考え。③とりわけ遺伝子工学新しい科学テクノロジーの発展にまつわる社会・倫理的な意味。そして最後になったが、やはり重要な、④新しい形態のアパルトヘイト=新しい<壁>とスラム。」


■はっきり言って、①や④は極めて分かりやすいのだが、②と③については、「よう分からん」というのが率直なところ。この辺は、もう少し説明が欲しかった。
とは言え、①や④だけでも充分過ぎるほど、資本主義システムにとっては敵対的で解決不能なものだ。ニコラス・スターンという人は、気候変動の危機を「人類史上最大の”市場の失敗”」と評した。


■しかしながら、このような機能不全に陥った資本主義をどのような道筋で解体し解放の政治を推し進めるのか、という具体的な方法論がイマイチよく分からなかった。もちろん、二十世紀の社会主義運動が犯した過ちをなぞるようなことがあってはならない。そこで、「綱領は見直され、あらゆることがゼロからスタートして再考されなければならない」とし、多分に「政治実験」的要素をもった運動として構想される。


○「なすべきは、満を持しての直接対決で去勢を敢行することではなく、根気強くイデオロギー批判を重ねることで権力者の支配力を弱めていき、まだ権力の座にある当局が、ふと気づいたときには声高な叫びに悩まされているようにすることだ。」


○「新しい運動を起こすよりも、現在支配的な運動を中断させること。これが今日あるべき政治活動のすることだ。」


○「つまり革命は、もはや出来事が勃発した後で正常に戻すというパターンに従うのではなく、グローバル資本主義の無秩序に対して「新秩序」を築く責務を負うのではないだろうか。われわれは胸を張って反乱から新秩序へ移行すべきだ。」


○「コミュニズムの普遍の要素とは、プラトンの昔から中世の秘教派の反乱を経て、ジャコバン主義、レーニン主義、毛沢東主義にまで有効とされる「四つの基本概念」だ。厳格な「平等主義の正義」、規律のための「テロル」、政治における「主意主義」、そして「人民への信頼」。」


■とまあ、こんなところから、ジジェク言うところの「ポストモダンの共産主義」というものを想像するしかないかな、と。ところで、この本の最後の一文、かって左翼運動に関わったオールドレフトたちへのジジェクの呼びかけは、皮肉もユーモアもあって秀逸。

○「恐れるな、さあ戻っておいで!反(アンチ)コミュニストごっこは、もうおしまいだ。そのことは不問に付そう。もう一度、本気でコミュニズムに取り組むべきときだ!」


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