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『いまも、君を想う』(川本三郎 新潮社)

2010.06.10(Thu)

『日本文学』 Comment(0)Trackback(0)

いまも、君を想ういまも、君を想う
(2010/05)
川本 三郎

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■大好きな評論家、川本三郎さんの新刊がでた。タイトルは、『いまも、君を想う』。きっと好きな俳優のことを書いた本なのだろうと思ったのだが、レビューをみて驚いた。七歳年下の奥様が亡くなられて、その追憶を綴った内容のものだったからだ。


■以前、書評をメインとしたリトル・マガジンを刊行していたことがあって、その時に川本さんに原稿をお願いしたことがあった。ご自宅に電話をかけたとき対応して頂いたのが、奥様の恵子さんだった。電話でのわずかな対応だったにも拘わらず、スマートで怜悧それでいて暖かみのある方で、やっぱり川本さんは素敵な方と結婚されているのだと、強く印象に残った。今回、表紙に大好きなシャム猫を抱いた恵子さんの淡い写真が慎ましく飾られているが、電話でのイメージそのまま、やっぱり魅力的な女性だったのだ。


■お二人が出会ったのは、1971年、激しい学生運動も退潮期にさしかかった頃だ。当時、「朝日ジャーナル」の記者をしていた川本さんは、下火になったとはいえまだ続いていた大学紛争の取材のために武蔵野美術大学のキャンパスを訪れる。そこで恵子さんと初めて出会う。彼女は川本さんの取材に対して、取材する側と同じくらいの質問を投げかけてきたという。大学紛争のこと、ベトナム戦争のこと、まだまだ熱気が残っていた頃だ。
その時の印象を川本さんはこう記している。


「彼女に会った時、正直、心がときめいた。何よりも、やせっぽっちで、どこか妖精のようだった。」


■そうして、二人の交際がはじまるのだが、川本さんは当時、警察からにらまれていた。ある公安事件で「取材源の秘匿」という立場を大事にし、警察に情報提供しなかったからだ。ついには逮捕され、朝日新聞を辞めざるを得なくなる。このあたりは、自伝的な傑作『マイ・バック・ページ』に詳しい。(ちなみに、この本、絶版になっていてアマゾンの古本価格で文庫本が4500円もしている。さらに、『天然コケッコー』の山下敦弘監督によって映画化され2011年公開予定)
とにかく、二人の出発は、最初から波瀾万丈だったのだ。一時は約束していた結婚の解消を申し出るが、彼女の方が承知しなかった。川本さん27歳、恵子さん21歳の時だ。
朝日を辞めた後、小さな編集プロダクションに就職する。しかし、仕事は面白くなく、無為の日々が続く。仕事のかたわら、映画評や文芸評を書き始めるが、そちらの方に力が入った。結婚して四年目、『朝日のようにさわやかに』と『同時代を生きる気分』が出版されることを期に、フリーのライターとして生きていく。


■その頃、住んでいた三鷹のマンションを拠点に、休日に二人で近くを散歩するのがなにより楽しみだったらしい。深大寺、神代植物園、吉祥寺の井の頭公園等々。そうして出かけた帰りに外食するのも楽しみの一つ。高いものは食べられないので、よく行ったのが自宅マンション近くの小さな焼き肉屋。
川本さんは、恵子さんが亡くなる日、看護婦さんに促され奥さんに語りかける。


「ベッドの脇に椅子を持ってきて座わり、家内の手を握りながら『三鷹に住んでいた頃楽しかったね。』と話しかけた。焼き肉がおいしかったことも。」



■川本さん夫妻の結婚生活は、挫折と不安からのスタートだった。それだけに、苦しかった日々と陽だまりのような微かな希望は、宝石のようにかけがいのない日々だったに違いない。その後、川本さんの評論家としての活躍によって、安定した穏やかな生活を送るようになる。凪のように穏やかな日々の追憶は、それはそれで味わい深いものがあるとは思う。しかし、ほろ苦いスタートとなった結婚当初の暮らしぶりが、なにより偲ばれるのではないだろうか。



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(2009/08/20)
川本 恵子

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