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『ヴァインランド』(トマス・ピンチョン 佐藤良明訳 新潮社)

2010.05.05(Wed)

『海外文学』 Comment(0)Trackback(0)
ヴァインランドヴァインランド
(1998/12)
トマス ピンチョン

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■いやあ、びっくりしました。「ピンチョンがこんなに面白くていいの?」という感じ。
ピンチョン作品を読むのは、『競売ナンバー49の叫び』、『スローラーナー』に次いで三作目なのだが、この『ヴァインランド』、既読の二冊とは比較にならないほど面白い。従来の作品と比べて、格段に読みやすくなったというのが、この作品の評判だったが、全くその通りだと思う。ただし、それだけではなく、ピンチョンという作家の世界や本質を薄めることなく、ガチでしかもポップに体現しているような作品でもあると思う。ポップカルチャー・カウンターカルチャーに対する偏愛と言ってもいい造詣の深さ、スケールのでかい、パラノイア的な国家権力の陰謀、豊饒な理系知識、ブラックにしてナンセンスかつ荒唐無稽なユーモア、実験的な語りの多用等々。ピンチョンについて語られる片々の情報を総合してみても、『ヴァインランド』にはその全てが詰まっているように思うのだ。
さらに、翻訳者の佐藤良明さんとピンチョンの相性の良さというのも特筆されるべきではないか。とりわけ、本書で描かれている時代、60年代末から70年代にかけてのカウンターカルチャーについては、自身『ラバーソウルの弾み方』(平凡社ライブラリー)という名著をものにされているほど深い造詣と思い入れを持っている人だ。
この『ヴァインランド』においても、巻末に3001個の訳注からなる、「『ヴァインランド』を楽しむための訳者ノート」が付されていて、60年代・70年代ポップカルチャー好きなら、これを読んでいるだけでも楽しめる。
しかも、自ら「ピンチョン歴20年」というほどの、ピンチョン・マニアであってみれば、これほどベストマッチな訳者は考えられない。『ヴァインランド』そのものが、もともと読みやすい作品であることは、間違いないのだろうけど、私は、佐藤良明さんという翻訳者の功も相当あると思う。ページを開いた瞬間から、これがピンチョンの世界かと目を見開かされる。



■ところで、この6月から、ピンチョンの全集(『トマス・ピンチョン全小説』新潮社)がほぼ新訳・改訳で刊行されるそうである。それとのタイアップだろうが、月刊『新潮』の五月号で、「新世紀トマス・ピンチョン」という特集が組まれている。ピンチョンの七大長編の冒頭・書き出し部分の新訳、池澤夏樹、柴田元幸、佐藤良明による対談などが収められていて、とても興味深い。その中で、「生き延びるためのアメリカ文学」という連載の番外編における、都甲幸治さんの指摘が面白い。
都甲さんは、ピンチョンはとても不幸な作家なのである、という。何故なら、あまりにも読まれることの少ない作家だからだ、と。「生きている中で最も偉大な作家」と言われ、多くの作家や評論家からリスペクトを受けていた作家にも拘わらず、「尊敬されてはいても誰も読まない」作家の典型がピンチョンだったのだと。
それに比べれると、「批判しかしないインテリから普通の大学生まで全員が読んでいる村上春樹のような在り方の方が、作家としては幸福なのではないか」という。
しかし、『ヴィンランド』以降の作品は、それまでの作品とは異なり、「わかりやすい」作品が生み出され、新作の『インヒアレント・ヴァイス』に至っては、この路線が「極限まで至っている」という。
それにしても、そもそも、ピンチョンの作品はそんなにも難解なものだったのだろうか。「批評家たちの言葉の壁を突き破り、ピンチョンの作品を読んでみれば、その野蛮なまでの面白さに読者は驚くだろう」と。これは、今回『ヴァインランド』を読んでみての私の率直な感想とも、ピッタリと重なる。そう、「野蛮なまで」の面白さなのだ。
さらに続けて、こんな指摘「読む側の頭の良さ競争のダシにされてしまったピンチョンを、高偏差値な人々から奪回して、バカの手に取り戻すこと。これこそ、ただの本好きたる我々に課された使命」なのだ、と。


■こうなると、6月から刊行されるピンチョン全小説への期待は高まるばかりである。デビュー作『V.』(1963年)から最新作『インヒアレント・ヴォイス』(2009年)まで、全小説を佐藤さんをはじめとする、新たな翻訳陣で刊行されるわけだ。難解と評判の『V.』や『重力に虹』が、新たな翻訳によってどのように蘇るのか。また、どんどん「わかりやすく」「明るくなってきている」と言われる最近の一連の作品は?6月刊の『メイソン&ディクソン』(1997年)は柴田元幸訳、実に楽しみ。

新潮 2010年 05月号 [雑誌]新潮 2010年 05月号 [雑誌]
(2010/04/07)
不明

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