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『密のあわれ』(室生犀星 講談社文芸文庫)

2010.02.22(Mon)

『日本文学』 Comment(2)Trackback(0)
蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ (講談社文芸文庫)蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ (講談社文芸文庫)
(1993/05/10)
室生 犀星

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■去年の暮れ、NHKのテレビドラマ「火の魚」というのを観た。なにげなく観ていて、たまたま目に入ったという感じなのだが、これが絶妙に良かった。内容は、東京から故郷の小さな島に戻った原田芳雄扮する老作家と、若い女性編集者との交流を淡々と描いたもので、丁寧に作られたテレビドラマの素晴らしさを堪能することができた。こんな地味だけど凄いドラマが、今時のテレビで観ることが出来るというのは、奇跡のようなものだと思う。
で、このドラマの原作となったのが、室生犀星の「火の魚」という短編である。ドラマの方は、脚色がかなり施されていて、それはそれでとても上手く仕上げられていると思う。室生犀星というと、『蜜のあわれ』(講談社文芸文庫)が以前から気になっていて、読むチャンスを伺っていたのだが、これはもう絶好の機会であった。


■『蜜のあわれ』は、「陶古の女人」「蜜のあわれ」「火の魚」「われはうたえどもやぶれかぶれ」「老いたるえびのうた」と、全部で五つの作品が収録されている。このうち、「おいたるえびのうた」は短い詩で、後は短編作品という構成だ。


■「陶古の女人」は、生涯の趣味であった陶器への溺愛を綴ったもので、随筆とも小説ともつかない作品。川端康成が、犀星のことを「言語表現の妖魔」と評したらしいが、なるほどと頷けるほど、自在な筆致が素晴らしい。


○「きょうも鬱々としてまた楽しく、何度も置きかえ、置く場所を選び、光線の来るところに誘われて運び、或いはどうしても一個の形態で定まらない場合、二つあてを拵え、二つの壺が相伴われて置かれると、二つともに迫力を失うので、また別々に引き離して飾ってみたりした、何の事はない相当重みのある陶器をけさからずっと動かしつづめにいた」


■「蜜のあわれ」は、金魚と老作家との交流をさりげないエロスを交えて描いた、ファンタジックな異色作だ。作家が可愛がっている金魚が人間の言葉をしゃべり、人間の姿に変身してあちこち飛び回る。この金魚のしゃべり言葉が、なんともユニークで、昭和のギャル語ともいうべき、妙な愛らしさと懐かしさを秘めていて、引きこまれる。しかし、このギミックだけで読み通すにはちょい長い、引っ張りすぎの感も。


○「あ、嬉しい。おじさまは、何時も、しんせつだから好きだわ、弱ちゃった、また好きになっちゃった、あたいって誰でもすぐ好きになるんだもん、好きにならないように気をつけていながら、ほんのちょっとの間に好きになるんだもの。」


■「火の魚」は、年末に観たテレビドラマの原作である。そして、後で知ったのだが、頑固な老作家と渡り合う若い女性編集者は、栃折久美子がモデルとのことである。栃折は、編集者を辞めて後、装幀家として有名になり『モロッコ革の本』という著作がある。さらに、哲学者の森有正とは彼の死に至るまで恋愛関係にあった。


■「われはうたえどもやぶれかぶれ」は、吉本隆明が老いの文学の傑作として、谷崎『瘋癲老人日記』川端『眠れる美女』とともにその名を挙げているらしい。一種の闘病記なのだが、暗いところは微塵もなく、むしろ最後まで頑固に(やけくそに)意志を貫く、そしてそんな自分をクールに眺める犀星がいる。
もし、私が最後の大きな病に見舞われたとき、こんなふうにエネルギーをまき散らしながら、闘病生活を送れるものだろうか?などと考え込む、今年還暦の私がいたりする。

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コメント
gatemouth cafe通信というタイトルを見て、もしや…とプロファイルを読むと、やはりあなたでした。随分前にお店に伺ったことがありますが、ひょっとすると閉められたのでは?と案じておりました。

ドラマ『火の魚』で検索していて、こちらにヒットしました。お元気そうで何よりです。
原田芳雄さんをはじめスタッフ全員が作品を愛していたことがよくわかります。

人間は必ず死ぬ。死は避けられない。ならば、何かを残して死にたい。それが老境にさしかかった者の欲ではないでしょうか?老いて枯れるというのは幻想かもしれません。
紅花紅子 2011.07.22 16:17 編集
紅花紅子様
コメントを有り難うございます。随分、前に来店されたことがあるとか、えーっ、どなたでしょうか、気になります。店の方、シコシコと続けています。良かったら、是非、またご来店下さい。

残念ながら、原田芳雄さん他界されましたが、『火の魚』素晴らしいドラマでしたね。役者は、作品を残して、その作品がいつまでも人の心に残るという、ある意味、羨ましい仕事ですね。
gatemouth8 2011.07.23 18:16 編集
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吹田の関大前で、「ゲートマウス」という小さなカフェを営業しています。
「ゲートマウス」は、「本が楽しめる、ミュージック・カフェ」、もしくは「音楽が楽しめる、ブックカフェ」といったイメージの店です。勿論、フードやドリンクも充実。是非お気軽にお立ち寄りください。日曜、祭日は休業。

吹田市千里山東1-11-16
TEL 06-6387-4690
MAIL gatemouth8@gmail.com

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