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「緑の家」(バルガス・リョサ 新潮文庫)

2010.01.18(Mon)

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■リョサのデビュー三作目の長編にして出世作。1966年発表の作品で、リョサが三十歳を迎えたときの作品だ。解説によると、当初リョサは、二つの土地を舞台に据えた独立した二つの作品を構想していたらしい。それが、二つの作品を一日交替で書き進めたところ、作品の登場人物や舞台が入り乱れ収拾がつかなくなり、後日、一つの作品にまとめられたのがこの『緑の家』。まるで、『フリアとシナリオライター』のシナリオライター、カマーチョのエピソードを彷彿とさせるようで微笑ましい。
小説の舞台として構想された二つの場所だが、どちらも、それまでの彼の人生の中で深い印象を植え付けられた土地であることは言うまでもない。一つは、ペルー北部の古都ピウラという町、そしてもう一つがアマゾン流域の密林地帯である。ピウラの町は、幼い日々をボリビアのコチャバンバで過ごしたリョサが、物心ついて初めて踏み入れた祖国ペルーの土地だった。そこで、彼は砂原にぽつんと立っている、緑色のペンキに塗られた奇妙な建物に惹きつけられる。夜ともなれば、男たちが誘われるようにその建物の中に入っていく。さらに、掘っ立て小屋が立ち並び、浮浪者や得体の知れない人々が住みついているマンガチュリーア地区にも強烈な印象を受ける。そこは、少年リョサが目にした初めての蠱惑的な世界でもあった。


■もう一つは、学生時代の終わりに、メキシコの人類学者の調査隊に加わって訪れたアマゾン流域の密林地帯である。調査隊は、インディオの調査研究が目的で、ここで、リョサは、インディオの生活を知り、彼らの話を聞き取ることから、近代と石器時代が同居するペルーの現実を知ることになる。
そんな中で、第二次大戦中にトゥシーアという日本人が、ブラジルからやって来て、アマゾン流域の奥地に分け入り、インディオを手なずけその配下に治めると、他のインディオの集落を襲っては略奪を欲しいままにしたという話しを耳にする。トゥシーアは、インディオの女たちを集めハーレムのようなものまで作っていたという。
ピウラの町とアマゾン流域の密林地帯、この二つが小説『緑の家』の主要な舞台だ。そして、ピウラの町・マンガチュリーア地区で見かけた盲目のハープ弾き、さらに密林の奥地で暴れ回っていた日本人トゥシーア。二人の人物と二つの土地にインスパイアーされて書かれたのが、この『緑の家』というわけである。


■確かに本筋はその通りなのだが、枝葉の物語もまたアマゾンの密林のように豊饒に繁茂している。さらに、時間・場所・登場人物が知らぬ間にワープしたりで、気をつけないと置いてけぼりを食わされる。リョサのいくつかの作品を読むと、このような手法は彼の常套の手法であることは分かるのだが、それにしてもこの作品の徹底ぶりは凄い。個々の断片がまるで迷路のように縦横に張り巡らされ、読者を一体どこへ誘おうとしているのか、最初のうちは全く見当が付かない。それが、読み進むにつれ物語の輪郭、登場人物のそれぞれの関係が徐々に明らかなってくる。
作家としてデビュー三作目、三十歳の時の作品だけあって、少々荒削りの展開であっても、読者を引っ張るだけのパワーとエネルギーが充ち満ちている。実際、フォークナーを彷彿とさせるような実験的な手法を用いつつも、核となる物語や登場人物が魅力的なだけに難解な印象は受けない。それになにより、リョサは写実的な作家で、個々の描写に抽象的な表現が入り込んでくることはない。さらに、人物の内面、意識の奥底まで錘を降ろすようなこともしない。あくまで、人間の外に現れる行動や発せられる言葉に重きを置くタイプの作家なのである。
だから、それぞれの断片は、生き生きとしていて読みやすい。ラテンアメリカの作家の中でも、マジックリアリズムのテイストが希薄な、極めて古典的な物語作家なんじゃないだろうか。そんなリョサにますます惹きつけられる今日この頃である。


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