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『シチリアでの会話』(ヴィットリーニ 鷲平京子訳・岩波文庫)

2009.10.18(Sun)

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シチリアでの会話 (岩波文庫)シチリアでの会話 (岩波文庫)
(2005/02)
ヴィットリーニ

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■『定本・私の二十世紀書店』において、著者の長田弘さんが、「ときどき立ち返ってひもときたくなる」と語っておられる『シチリアでの対話』を読んだ。全くその通りで、読書する楽しみを存分に味あわせてくれる小説だと思う。私の場合、この作品が反ファシズムの運動を背景としたネオ・リアリズム文学に連なる作品であることは、なんとなく分かっていた。しかし、本書全体の三分の一を占めようかという、訳者・鷲平京子さんによる詳細な「解読」を読むと、自分の読みが全くヴィットリーニの意図にまで届いていないことを痛感させられる。そのような意味においても、もう一度読みたいと思わざるを得なかったりする。


■とは言え私のような、イタリアにおける反ファシズムの闘争について、全く無知な人間が読んでも充分楽しめる作品であることも事実である。イタリアのネオ・リアリズム的な芸術というと、例えばヴィットリオ・デ・シーカの映画『自転車泥棒』のような作品を想起する。貧困というものを、自然主義的に直裁にこってり描くというような。ところが、この『シチリアでの会話』は、そういった作風とはちょっと違う。もうちょっと軽く、ユーモアがありファンタジックというか、ラテンアメリカ文学のマジックリアリズム的なテイストもあったり、またカフカの『城』のようなイメージもあるような気もする。
鷲平さんの「解読」によると、この作品が書かれた時期は、スペイン内戦に対し、イタリア・ファシズム独裁政権が、ナチス・ドイツ軍と共謀し共和国軍側の武装した労働者や農民に無差別の空爆を開始した時期と重なる。もともと、ファシズムに好意的だったヴィットリーニだが、こういった事態に直面して決定的な懐疑をファシズム政権に対して抱く。のみならず、暴虐非道なファシズム連合の振る舞いに対し、武器を取って立ち向かうことこそが、イタリア解放とスペイン民衆との真の連帯につながるという立場に立つまでになる。このような彼の思想的立場を、広範な人々に広めていくこと。そのために、本書の執筆に没入していく。とは言え、検閲の厳しいファシズム体制のもと、直截な表現を避け暗喩やイメージの繁用、ユーモラスでファンタジックな表現を使いながら、隠れたメッセージを発信していく。こうした苦心の試みが、作品に深みと拡がりを与えているように思うのだ。


■ある冬「漠とした怒りに」とらわれ、「破れた靴」に雨水をしみこませた男が、父からの手紙で、母と別れたことや、十二月八日の聖名祝日のお祝いに例年通り葉書を出すのではなく、ひとりぼっちの母親に直接会いに行くことを勧められる。こうして男は、十五歳で故郷シチリアを出て以来、十五年ぶりにシチリアへと向かう汽車に乗る。こうして、この物語は始まっていく。汽車の中で、シチリアでそして母の家で、男は様々な人と出会い様々な会話を重ねていく。


■訳者の「解読」によると、この作品を書くに当たってヴィットリーニは、音楽の持つ力(「人々の意識や情念を根底から動かす力」「言葉にならないことどもまでもむしろ効果的に表す力」)に注目したらしい。そしてその文学的表現とも言うべき詩の力を借りるなら、暗黙のメッセージの発信という難しい仕事も可能であると、確信するに至る。さらには、フォークナーらのアメリカ文学の新しい動向や、ダンテの「神曲」を手がかりにしつつ、執筆を開始する。こう書くと、なにやら小難しそうな感じがするのだが、最初に書いたように、実際にはもっと軽くユーモアがあって、ごく普通に楽しめる本だ。
このヴィットリーニに見出されたのが、あのイタロ・カルヴィーノである。そう言えば、カルヴィーノの雰囲気も感じられるような、いい小説です。

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