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『格差はつくられたー保守派がアメリカを支配し続けるための呆れた戦略ー』(ポール・クルーグマン 三上義一訳 早川書房)

2009.05.11(Mon)

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●著者は言うまでもなく、08年度ノーベル経済学賞受賞の著名な経済学者。
そのクルーグマンが、アメリカにおける格差問題の根源に、共和党の右旋回、つまり「保守派ムーブメント」による共和党の乗っ取りという事態があったと、きっぱり断言しているのがこの本。
経済や市場の動向によって、自然発生的に格差拡大が生じたなどという、うやむやな分析ではない。あくまでも、保守派の政策が全ての根本原因であるということを、見事に解き明かしてみせてくれる。
「保守派ムーブメント」は、一九五五年にウイリアム・バックレーが、黒人の投票権を阻止しようとする南部の主張を、擁護しようとして創刊した雑誌「ナショナル・レビュー」の誕生とともに、ささやかな歩みを始める。この小さな動きは、年とともに強力なもになり、ついには、アメリカにおいて保守革命と称されるほどの影響力を発揮するようになる。この運動には、ミルトン・フリードマンらのシカゴ学派のエコノミスト、アーヴィング・クリストルらの社会学者たちが、知識人の側から合流。もちろん、宗教右派も強力な組織力で「保守派ムーブメント」を支え、さらに、「税金を払いたくない富裕層」や、「規制を嫌う企業」などもその隊列に加わる。
アメリカにおける格差拡大は、このような「保守派ムーブメント」の政策によって、必然的にもたらされたものである、というのがクルーグマンの主張の全てだ。しかも、その手口は、黒人や有色人種に対する差別感情を巧妙に利用したという点で、極めて醜悪なものであるいう。
経済学者が、しかもノーベル賞受賞という一流の学者が、ここまではっきりと政治の問題としての格差問題に切り込むこと、ことの本質に勇気を持ってズバリ切り込むこむことにまず驚かされ、感銘を受ける。著者が、長年にわたる民主党支持者であってみれば、当然といえば当然の主張ではあるが、それにしても、爽快な切り方で心地よいことこの上ない。


●ところで共和党が、「保守派ムーブメント」に乗っ取られたというのだが、ちょっと考えると、収まりの悪さを感じる。というのも、乗っ取られるまでもなく、共和党は、もともと保守派そのものではないか?何で今更?
実は、アメリカでは戦後、長い間ニューディール政策の影響が色濃く支配していた。で、そのニューディール政策なのだが、まず、思い浮かべるのが公共事業による景気回復という政策イメージだ。しかし、それだけではなく、それまでのアメリカの格差社会を一気に圧縮して、豊かな中流社会を出現させたリベラルな政策という側面があるのだ。
富裕層からはより多く、貧困層からは少なくという累進課税の強化や、労働者に対する手厚い保護、高齢者の年金制度や失業保険制度など、戦時下における強い権限の下でなされたこれらの政策は、それまでの格差社会を根底からひっくり返すものであった。そして、これらの政策は、多くの国民の支持を受けていたため、共和党もあえてそれに反対することはできず、アイゼンハワーのような共和党の大統領でさえ、ニューディール的政策を踏襲せざるを得なかった。つまり、共和党は長い間、リベラルな経済政策を支持する政党だったわけだ。「保守派ムーブメント」が共和党を牛耳るまでは。


●このような状況を変えたのがロナルド・レーガンだった。一九六四年の大統領選挙において、共和党は「保守派ムーブメント」の活動が功を奏し、バリー・ゴールドウォーターを大統領候補に指名する。ゴールドウォーターは正真正銘の保守で、ある意味早すぎたレーガンだったのだが、選挙では屈辱的な敗北を喫する。このときテレビで応援演説をしたレーガンのスピーチは、「選択の時」というタイトルだったが、大きなインパクトを与えたため、後に単に「ザ・スピーチ」と呼ばれるようになる。
内容としては、基本的に「大きな政府」の悪について、支離滅裂に伝えるものでしかなかったのだが、ここにおいて、「保守派ムーブメント」は、真の大衆的支持基盤を見出だすことになる。
レーガンは、「小さな政府というレトリックを使い、あからさまに人種差別的にならずに黒人解放運動に対する白人の反発をくすぐることができた」し、「納税者の税金を無駄にしていた役人の大群を非難すれば、福祉に自分たちの血税がつぎ込まれていると思いこんでいた有権者の不満を刺激することができた」のだという。
そして、なによりも、「その福祉の恩恵を受けていたのが、誰かは周知のことであった」と。それ故、実に巧妙に黒人に対する差別意識をあおり、それを利用することができたというのである。
もう一つの彼の演説の柱は、共産主義の脅威に対する被害妄想をくすぐることで、この点でも、大きな成功を収める。そう言えば、レーガンの時代、スタローンの「ランボーシリーズ」という映画がヒットした。あのようなハリウッド産オバカ映画もレーガンにとっては、強力な援護射撃となったに違いない。
とにかく、「保守派ムーブメント」は、「一般大衆の感情にアピールする二つのことを見出し、広い大衆的支持基盤を掘り起こすことに成功したのである。その二つとは、白人の黒人解放運動に対する反発と、共産主義に対する被害妄想であった。」という。
レーガンの登場以後、アメリカの保守革命は成就し、その後、二〇年以上に渡って、この国の政治・経済を席巻し、うちにあっては、貧困と格差の拡大、外にあっては、単独行動による武断政治によって、泥沼のイラク戦争に突入していく。
そして、行き着いた先が、金融危機から始まった世界大不況という前代未聞の事態だ。


●しかし、そのアメリカも新大統領に黒人であるオバマが就任し、高い支持率を得ている。
それは、「保守派ムーブメント」への退場勧告であると同時に、黒人差別を口実にした福祉切り捨てが、最早多くの人々の歓心を買わないということの現れでもあるのだろう。
これは、クルーグマンが指摘しているように、黒人だけではなく、他の多数の有色人種が移民という形で流入してくることによって、人口構成が大きな変貌を遂げてきていること、同時に、白人の考え方の中に、有色人種に対する差別的な思考が、かってほど大きなものではなくなってきていることなどが、今回の大統領選挙ではっきり表れたということだろう。


●私は、ウッドストックやヒッピームーブメントの時代に青春を送ったので、アメリカに対する、別の意味での憧れのようなものがあったが、レーガン以降の保守革命を見るにつけ、歴史というものは時として逆行するものだということを、つくづく痛感していた。60年代のカウンターカルチャーは、実はアメリカでの保守派台頭の遠因の一つにもなってしまっていた。しかし、そこでまかれた種は決して死に絶えてはいなかった。それが、今回のオバマ勝利へ繋がったとも考えられる。(オバマ勝利の要因は、もちろん、それだけではないだろうが)遅きに逸した感があるにせよ、私は、このように劇的な転換を選択するアメリカ、ブッシュと対極の人物を選ぶアメリカに対して、やはりある種、憧れの気持ちを抱かざるを得ない。さて、日本でも選挙が目前に迫ってきている、はたしてどのような選択が下されるのだろうか。日本においてもチェンジが、現実のものになることを願うばかりだ。

格差はつくられた―保守派がアメリカを支配し続けるための呆れた戦略格差はつくられた―保守派がアメリカを支配し続けるための呆れた戦略
(2008/06)
ポール クルーグマン

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