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歴史認識を問い直す 靖国、慰安婦、領土問題  (東郷和彦・角川oneテーマ21)

2013.05.26(Sun)

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歴史認識を問い直す  靖国、慰安婦、領土問題 (角川oneテーマ21)歴史認識を問い直す 靖国、慰安婦、領土問題 (角川oneテーマ21)
(2013/04/10)
東郷 和彦

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■著者の東郷和彦さんは、ロシアを専門とする元外交官、その後世界各地の大学で国際関係の研究者として活躍されてきた。豊富な人脈や情報ソースをもとに語られる本書の説得力は半端ない。危機の時代である今だからこその必読の書。
 東アジアは、あの暴走爺さんのお陰で、いつのまにか世界のホットポイントの一つになってしまった。その尖閣の緊張がつい二週間位前まで喧伝されていたと思ったら、突如、降ってわいたように橋下徹による「慰安婦問題」に対する問題発言の連射が始まった。本来なら、いつものように放言・暴言で世論を攪拌しつつ、なんとなく自身に有利なポジションを確保して終わるはずの橋下徹劇場が、今回ばかりはそうはいかなかった。世界中から大バッシングを受けたからである。
 この橋下の惨めな姿は、日本社会の現実を正確に映し出している。この問題に対して日本と世界は、その認識において絶望的なまでに乖離している。橋下の問題発言は、この埋めがたい溝を白日の下にさらしたのである。
その、「従軍慰安婦」の問題について、著者まずこう述べる。

★「安倍政権の対応如何によっては、この問題は、日韓二国間問題を超え、米国をはじめとする欧米諸国と日本との間に計り知れない深刻な対立を引き起こす可能性がある」

★「万一そのような対立に至った場合には、日米同盟の根幹を直撃し、中国との武力抗争が発生しても、日本はアメリカにとって、守るべき同盟者ではないという致命的な印象を作り出す危険性がある」

★「この問題が国際的に如何に大きな火種となりうるかが、日本国内では、いまだに十分に報道されていない」

★「この世界の大勢についての正確で鋭敏な情報を入手し、それに有効に対応しない限り、日本は、来るべき外交戦争に敗北する」


■「慰安婦問題」は、センシティブで国際政治を揺るがす大問題なのである。メディアはこの問題が、世界政治に占めるウェイトを意図的に隠蔽しているとしか思えないような報道を続けている。
 さらに、日本国内におけるこの問題の誤ったとらえ方を俎上にあげる。


★「この問題をめぐりいま日本で形成されつつあるおおむねの相場観は、日本人にしか意味をもたず、日本国内でしか通用しない」


■この「日本で形成されつつあるおおむねの相場観」とはなにか?安倍晋三をはじめとする右派の論客が持ち出す「狭義の強制連行」はなかった、という論理だろう。つまり、奴隷のような人狩りをして「慰安婦」を集めたことはなかった、という論理。確かに、朝鮮や台湾においては、既に行政システムが完備しており、そのような人目を引く野蛮な手段を使わずともよかったのである。朝鮮においては、徴収業者の貧困層の女性に対する就業詐欺ーつまり騙すーという手段が最も多く使われた。
 この一点を持って、右派の有識者たちは、韓国や世界に対し「強制連行」についての「真実」をはっきり主張しようという勢いを強めた。
 しかし、これが完全な裏目に出た。


★「この日本国内における狭義の「連行」についてのコンセンサスの成立が、世界の常識的な捉え方からかけ離れてしまう゛ガラパゴス化゛を招いたと思われる」


■2007年3月16日、第一次安倍内閣は、河野談話の中の「強制性」を否定しようという姿勢を強く打ち出し始める。この過程での安倍の発言に対するアメリカのメディアの論調は凄まじいものだったという。


★「安倍総理を慰安婦問題の「否定者」として糾弾する米国マスコミの論調は想像を絶してすさまじいものがあった。日本語の活字にするとどうしても表現できない、肌で感ずる無気味な「日本否定論」が突如として噴出した」


■著者はその2ヵ月後、アメリカにおける歴史問題シンポジウムに参加し、世界がこの問題をどう見ているのかを知る。それは著者にとって「青天の霹靂だった」という。

①「強制連行」があったかなかったかについては、この問題の本質にとってまったく無意味であり、世界の大勢は、だれも関心を持っていない。

②アメリカ人が慰安婦の話を聞いた時彼らが考えるのは、「自分の娘が慰安婦にされていたらどう考えるか」という一点のみである。そしてゾッとする。これがこの問題の本質である。

③「強制連行」と「甘言で騙されて」気がついた時には逃げられないのと、どこがちがうのか。

④これは非歴史的な議論である。現在の価値観で過去を振りかえって議論しているのだ。もしそういう制度を「昔は仕方がなかった」と言って肯定しようものなら、女性の権利の「否定者」となり、同盟の担い手として受け入れることなど問題外の国ということになる。

⑤解りやすい例で言えば、「建国のころアメリカは奴隷制を受け入れていたのだから、歴史的な奴隷制は当然の制度」という議論が、今のアメリカではまったくうけいれられないことは、日本人にも理解できるのではないか。「慰安婦制度は歴史的にはやむをえなかった」という議論は、全くそれと同じに聞こえる。

■にもかかわらず、日本の右派は、このようなアメリカでの従軍慰安婦問題のとらえ方とは真逆の方向へと動きをさらに加速させる。わけても「強制連行はなかった」という『ワシントンポスト』への、日本人有識者による一面広告の掲載である。この広告は、日本人は従軍慰安婦の人権の否定者であるという破滅的な印象を全米にばら撒くこととなった。そして、前代未聞の下院本会議で慰安婦決議案(日本に対する謝罪要求)が決議される。その後、オランダ・カナダ・EUの議会で同様の決議が採択されていった。

■今回の第二次安倍内閣は、「アベノミクス」を看板に日本はもちろん、世界中の注目を浴びたようだ。しかし、高支持率に浮かれ、またぞろ「村山談話」や「河野談話」の見直しを口にし始めた。案の定、世界中のバッシングを受け、あわてて「村山談話」と「河野談話」を継承する路線に舵を切った。6年前にアメリカで下院決議が上がり、世界各国が謝罪要求の決議をあげたことを、完全に忘れたかのような愚かな振る舞いだ。
冷静な著者が、激した調子でこう結論づける。

★「慰安婦問題に関する対外発信を誤ったがゆえに、戦後の世代が営々と築きあげてきたものまですべて失い、よくても世界の孤児か、最悪の場合は国の形を失うような負け戦に入るのか。
 この無知は、狂気に通ずると言わねばならない」

■慰安婦問題は、国家の安全保障とも密接にリンクしている。憲法を改正し、自衛隊を国防軍という名前に変え、軍備を増強することだけが、安全保障なのではない。
 この問題は、日韓の二国間関係を超えた国際政治上の大問題であるというのが、まず共有すべき基本的な視座なのである。今回の橋下問題は、日本の有力政治家でさえ、そのような基本認識がもてず、井の中の蛙と化しているという、空恐ろしい現実を突きつけた。ことは、橋下だけではない、多くの政治家、メディア、言論空間、社会総体がガラパゴス化し、問題と正面から向き合うことを回避している。お茶の間の政治バラエティで、無責任な戯れ言を垂れ流すのとはレベルの違う話である。
 戦前さながら、世界と日本の認識のギャップがぱっくりと口をあけ、寒々とした光景が現前に広がる。
 なにより、今回の問題をめぐり、明日予定されている、橋下の外国人記者クラブでのインタビューに、300人以上もの記者が世界各国からやってくることが、それを証明している。
 世界中が橋下を日本を注視しているのだ。







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