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『コレクションズ』(ジョナサン・フランゼン 黒原敏行訳 ハヤカワepi文庫)

2013.04.07(Sun)

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■ジョナサン・フランゼンというアメリカ人作家のことを最近知った。『フリーダム』(早川書房』)という最新作が話題になっているが、アメリカでは既に大御所の一人みたいで、今回読んだ『コレクションズ』は、2001年に刊行され全米図書賞を受賞、280万部以上を売り上げたという。
 さらに、新作『フリーダム』がアメリカで刊行された2010年、『TIME』誌の表紙を飾っている。過去に、サリンジャー、ナボコフ、トニ・モリソン、ジョージ・オーウェル、ジョン・アップダイクと言った錚々たる作家たちが表紙を飾った。現役作家としては、スティーブン・キング以来、十年ぶりというのだから驚きである。多分、ポール・オースターもジョン・アーヴィングもドン・デリーロも、未だその栄誉に浴していないであろう、というのに。帯に「アメリカの国民作家」などというコピーが踊っているが、それも納得というほかない。
 しかし、その割に日本で知られてないのはなぜ?という疑問が当然ながら湧いてくるのだが、多分、それは恐ろしいくらいの寡作ぶりにあるのではないだろうか。ほぼ十年に一作というペース、日本で翻訳されているのは、『コレクションズ』と新作の『フリーダム』の二作のみということなので、意外に知られていない大物作家というスタンスも致し方なしというところか。

■今回読んだ『コレクションズ』は、十年に一作という時間の重みがずっしりと感じられる作品だ。文庫で上下二冊900ページを超す大作ということもあるが、エピソードの練り上げ、細部の精緻な描写、シニカルな独白など、どこを切り取っても面白い。
 内容は、アメリカ中西部のセント・ジュードという架空の町に住むランバート夫妻とその子供たち三人の物語である。家族の物語と言っても心温まるのどかな物語などでは、もちろんない。シリアスかつコミカル、さらにシニカルでもある。
 家族が暮らしたアメリカ中西部という地域は、アメリカでももっとも保守的な地域として知られている。その保守的な地域にぴったり溶け込んだかのような、頑固な父親・アルフレッドと世間体を気にする母親・イーニッド。三人の子供たちは、心のどこかに両親や故郷に対し鬱屈した思いを抱えながら成長した。長男のブライアンは、フィラデルフィアの銀行の部長を勤めているが、拝金主義で妻や子供たちとの不和に悩まされている。次男のチップは、大学で先鋭的な文学理論を教えていたのだが、教え子の女子学生とトラブルを起こし、大学を追われる。末娘のデニースは、新進気鋭の料理人として注目を集めるが、これも雇い主とのトラブルで有名レストランの職を失う。
 子供たちそれぞれの波乱のストーリーが、大きな読みどころだが、同時に、父親のアルフレッドも徐々に痴呆が進行し、母イーニッドの負担が増えていく。両親の危機的状況と、子供たちの親に対する屈折した思い。複雑に絡まり、錯綜する様々な思惑のあいだで、どう折り合いをつけるのか、どのような<コレクションズ=修正>局面が生み出されるのか、というのがおおまかなストーリー。

■フランゼンは、ぎしぎしと音を立てて軋み合う価値観の衝突や、それぞれが内に秘めた、わがままで身勝手、病的な思い込みを、なんの脚色もせずあるがまま表出させる。取り繕った態度の奥底にあるエゴイスティックな澱を、鷲掴みにして読者の前に放り投げる。
例えば、長男ゲイリーのこんな独白。

◇「ゲイリーは、もう沿岸部への移住は法律で禁止して、中西部人には田舎くさい食べ物を食べ、野暮ったい服を着、盤上ゲームで遊ぶ古い生活に戻るよう奨励してもらいたいと思う。そうすれば、この国でも数多くの田舎者が温存され、洗練された趣味を知らない荒蕪地が残って、彼のような特権階級の人間が、自分はすぐれて文明的だという感覚をいつまでも持ちつづけることがー」

◇「ホームセンターの精算所で、ゲイリーはアメリカ中部でもとりわけ肥満したのろまな連中に見える客たちの列についた。マシュマロのサンタや、安ピカ物の飾りや、ベネチアン・ブラインドや、八ドルのドライヤーや、クリスマスにちなんだ図柄の鍋つかみなどを買いにきた連中。代金をぴったり払おうとソーセージみたいな指で財布を掻きまわす連中」

■新自由主義的価値観にどっぷり浸かった長男のゲイリー、リベラルな価値観でオルタナティブなライフスタイルを模索するが、どこか間が抜けていて失敗を繰り返すチップ、その中間に位置するようなデニース。
危機をくぐって家族が着地した地点は、それぞれがほんの少しずつ生き方を「コレクションズ=修正」した、ごく穏当なものだった。
 そこに至る家族の航海を通じ、著者は、90年代末期、「後期資本主義」のただ中にある、アメリカ社会の現実を見事にあぶり出している。








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