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『私たちはこうして「原発大国」を選んだ』(武田徹 中公新書ラクレ)

2011.06.11(Sat)

『政治・社会・経済』 Comment(6)Trackback(0)

私たちはこうして「原発大国」を選んだ - 増補版「核」論 (中公新書ラクレ)私たちはこうして「原発大国」を選んだ - 増補版「核」論 (中公新書ラクレ)
(2011/05/10)
武田 徹

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■ここのところ、ネットで「ビデオニュースドットコム」という社会学者の宮台真司さんとフリーのジャーナリスト神保哲夫さんがホストを務め、ゲストを招いてのトーク番組をよく視聴している。大手メディアがまともな情報発信をしないとなると、スケールは小さいが質の高い情報を提供してくれるネットメディアの存在は、ホント、ありがたい。そんな私の貴重な情報源の一つが「ビデオニュースドットコム」http://www.videonews.com/。この本は、その「ビデオニュースドットコム」で宮台真司さんが、大絶賛されていたので思わず手に取ったものだ。
しかし読んでみて、どうも「ナンダカナア?」という気分ばかりが残った。どうして宮台さんがこの本を「ここ数年で読んだ本の中では一押し」みたいな発言をするのか首をかしげてしまう。著者の武田徹さんは不定期ながら「ビデオニュースドットコム」の司会を務めている。そんなこともあって、「ひょっとして内輪ぼめなんじゃないの?」という勘ぐりも。


■内容はというと、こんな感じ。


◇「時系列に沿って戦後史を振り返った本書の「一九五四年論」から「二〇〇二年論」にいたる九つの議論には、ゴジラや鉄腕アトムの登場する「文化史」、初代の科学技術庁長官を務めた正力松太郎と首相に登りつめた田中角栄が関わった「政治史」、原子爆弾の開発者であるオッペンハイマーや卓越した数学的センスを武器に時代を駆け抜けたジョン・フォン・ノイマンに代表される「科学史」、輝く未来を提示した大阪万博やJCOの事故を扱った「社会史」、清水幾太郎や高木仁三郎に触れた「思想史」と分野を横断した議論を俎上にのせました」

■とまあ、原発をめぐる歴史を振り返っているわけだけど、そこに政治や思想や文化、科学など思いもよらぬ角度からの切り込みがあって、そこの部分は、なかなか新鮮で面白い。
なんだけれども同時に、「3.11」を通過してこのスタンスでいいの、という疑念も強く残った。(まえがきのところで、今回のフクシマ事故を受けて、著者の思いのようなものが綴られているのだが、著者のスタンスは、原著発行の時と全く同じ。)以下、その理由を述べてみたいと思う。ちなみにこの本は、もともと『「核」論』というタイトルで、2002年に 勁草書房から出版されたものである。今回の震災を受け、『私たちはこうして「原発大国」を選んだ』というタイトルで新書化された。

■で、そもそもの著者の執筆動機だが、こんな風に述べられている。

◇「こうして『「核」論』ではハンタイ、スイシンの違いを超えて核=原発論に入れる入口を多く用意し、原子力をめぐる膠着した状況を打開できないかと工夫しました。」

◇「私たちは「スイシン」「ハンタイ」のような二つの立場を超えて、両者を調停し、リスクを最小化し、利益を最大化する均衡点を見出してゆく理性と、他者に配慮する力を持っていると私は信じています。」

武田さんの思いのようなものは分かる。そのスタンスは、公平で良心的、かつ客観的な立場のようにも思える。
しかしである、そもそも「スイシン派」と「ハンタイ派」が、わざとらしくカタカナで、並列的に対等に置かれているのはどうもフェアではないような気がする。

■現実問題として、「スイシン派」の勢力や影響力に比べ、「ハンタイ派」がいかほどの力を持ち得たのだろう?それは、膠着とか拮抗というレベルではないだろう。「スイシン派」なるものの実態を考えてみれば、誰にでもわかることだ。「政府」・「政権与党」・「担当省庁」・「巨大電力会社」・「プラント会社」・「大学アカデミズムなどの研究機関」、「経団連」のような財界、「電機労連」といった労組、さらには原発が立地する「自治体」等々、次から次へと巨大権力が思い浮かぶ。さらに、この本でも触れられている、『「核」の平和利用』というキャンペーンを大々的に展開してきた「読売」などのメディア。これらは、ほぼ日本の中の、権力という権力をほぼ網羅しているかのようだ。
対する、「ハンタイ派」の内実とはいかなるものか、まず、地元住民のなかの反対派、「原子力資料情報室」などの市民団体、社民党や共産党など少数野党、アカデミズムの中のごく一部の研究者。明らかに、「スイシン派」とは違って、カネと権力とは無縁の、ほとんど日本社会においては、マイノリティと言ってもいい弱小集団である。カネも権力もある「スイシン派」とは比ぶべくもない。巨大戦艦と小さなボートが戦っているようなものだ。これのどこが「膠着」と言えるだろう。「スイシン派」「ハンタイ派」とわざわざカタカナで並列的に置くことによって、現実の圧倒的な力関係を見事に隠蔽してしまってはいないか。
しかも、メディア的にも90年代くらいまでは、「両論併記」という原則で、賛否両論を報ずる姿勢もあったが、ゼロ年代以降は、CO2削減の切り札として原発が脚光を浴び、「ハンタイ派」が陽の目を見ることなどほとんどなかったはずだ。つまり、ここ十年くらいの日本は、原発推進ほぼ一色といっていいような状態が続いていたのではないか。


■さらに、この本における「ハンタイ派」批判の柱になっている、こんな文章。


◇「核エネルギーをどう受け入れるか、あるいは拒否するかは、不確定な未来を選ぶという点において最終的に「賭け」にならざるをえない。そのときに大切なのは、できるだけ多くの情報をもとに、可能なところまでは科学的な確定性の領域に踏みとどまってから決断すること。野球のピッチャーになぞらえると、ボールを早々に放つのではなく、ギリギリのところまで我慢してボールを指に引っかけながら手放すことで、自分自身をより正確にコントロールする。なるべく多くの確実性をもとに「賭け」に臨む態度が必要です。」


◇「本文でも書いたが、科学的な思考を超える賭けをしなければならない地点があることは認めるものの、どこまで科学的な思考を延長できるかがよき賭け手になる必要条件だろう。フォームの崩れたピッチャーのようにリリースポイントの早すぎるハンタイ派は悪しき賭け手であり、彼らの思考パターンにも、その意味で批判的にならざるをえない。」


■原子力を受け入れるかどうかは、ある種の「賭け」であるという。そもそも、原子力のような巨大なリスクを伴う技術を最終的に「賭け」で決めるしかない、と告白している時点で「スイシン」すべきではないだろう。「フクシマ」はその見事な証明になってしまったわけだ。そして、「ハンタイ派」を「リリースポイントの」早すぎる「フォームの崩れたピッチャー」であるという。結果として「悪しき賭け手」になっているというわけだ。果たしてそうだろうか?
今回の原発事故で、メディアはいわゆる「御用学者」と呼ばれる「スイシン派」の研究者を動員し、多くの国民に安全キャンペーンを展開してきた。フクシマで一体なにが起こっているのか、政府や大手メディアの垂れ流す情報だけだではなにも分からなかった。にも関わらず、世論調査などを見ると、時が経つにつれ、「脱原発」を志向する人の数の方が大きくなっていった。それは、TVや新聞というメジャーなメディアを離れ、週刊誌やラジオ、さらにはネット・メディアといった小さなメディアで報じられる、「ハンタイ派」の研究者や技術者のほうに説得力があったからではないか。
京大の小出裕章氏や原発プラントの技術者・後藤政志氏、地震学者の石橋克彦氏など、「ハンタイ」の立場の研究者の発言は、少なくとも「フォームの崩れたピッチャー」にも「悪しき賭け手」のようにも思えなかった。


■そして、極めつきのトンデモ「ハンタイ派」批判がこれ。思わずのけぞってしまうような、こんな一節。


◇「そして反原発運動の高まりが、かえって事故を招くこともある。たとえば原発の運転員の志気を落とすのは、慣れだけではない。周囲からその仕事の重要性が認められなくなること、更には「汚れた仕事」だと蔑視されるようになれば、彼らは間違いなく落胆する。就職希望者も減り、優秀な人材を採用できなくなる。そうなった時、むしろ反原発運動の高まりが原発事故を導く要因になるという皮肉な結果になる。」


◇「ハンタイ派の啓蒙活動の結果、原子力に恐怖を感じる人が増えれば、雇用者は雇用に苦労するようになり、賃金面での配慮を行う。無知な人だけが誘蛾灯に誘われるようにそこに入って行く。そうした構造が事故を起こさせ、二人の犠牲者を出した(JCOの臨界事故のこと)。その意味で、この事故に対しては、ハンタイ派も決して無罪ではない。」


■これはちょっともう、開いた口がふさがらない。「反原発運動の高まりが、かえって事故を招くことがある」と、是非その実例を挙げてもらいたいものです。さしずめ、今回のフクシマの事故があって、いち早く「脱原発」路線を打ち出したドイツなどは、日本とは比べものにならないくらい、反原発運動の強い国、武田理論でいくと、事故だらけの国になりはしないか。ここで武田さんが言っているのは、「ハンタイ派はとっとと武装解除しろ」と、そんな風に言っているとしか思えない。「リリースポイントの早い」「フォームの崩れたピッチャー」は、一体どっちなのかと言いたい。


■ありもしない、幻想の中道を行く武田さんは、もちろん、「スイシン派」に対しても、批判の矛先を向けてはいる。それらは、全て正鵠を射たものだ。しかし、「ハンタイ派」に対するものは、どうも「イチャモン」をつけているとしか思えないレベルのものだ。それは、はからずも「ハンタイ派」とか「運動」というものに対する、自らの予断と偏見を自己暴露したかのようだ。
「ハンタイ」「スイシン」という立場を超えて、というと聞こえはいいが、残念ながら、ここにあるのは、時に「ハンタイ」、時に「スイシン」と状況に応じて、カメレオンのように都合良くその姿態を変える、まるで風見鶏のように不安定な視点だ。



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コメント
おっしゃる通り武田さんの議論は、むちゃですね。武田さんは推進派が反対派をどのような手段でもって沈黙させたかもう少し丁寧に調査する必要があるように思います。原子力についてどれだけ国民が情報を開示されてきたのでしょうか。その上で国民は原発を選んだのでしょうか?事故という証拠を示すことでしか、危険性を明らかにする方法はなかったのではないでしょうか。
河内のおっさん 2011.06.27 13:11 編集
河内のおっさん様、コメントを有り難うございます。
武田さんの本は、宮台真司さんが絶賛されていて、期待して読んだのですが、がっくりでした。「二項対立を超えて」「不毛な論争を超えて」とか、一見良心的なのですが、内容的には、単に推進派を代弁しているとしか思えないものでした。今後ともよろしくお願いします。
gatemouth8 2011.06.27 22:59 編集
武田さんと同じタイプの議論がいくつか出ているようです。武田さんが絶賛している『フクシマ論』は、原発の危険性に3.11以降目覚めた人を「ニワカ」と言っています。この本もできれば書評していただくことを望みます。
河内のおっさん 2011.07.17 19:56 編集
「河内のおっさん」さん、コメントを有り難うございます。
『フクシマ論』、私も気にはなっておりました。おおよその内容から、武田さんと同様な立場なのかな、とも思ったりしていました。機会があれば呼んでみたいと思います。
いま、宮台真司さんと飯田哲也さんの『原始社会からの離脱』の記事を書いています。でも、結構、話がとっちからかっていて、まとめるのに苦労しています。もうすぐ、アップする予定です。
gatemouth8 2011.07.19 00:27 編集
joqr文化放送のソコトコの武田鉄也の今朝の三枚卸で取り上げていました。ゴジラが水爆の申し子だったのに宇宙怪獣と戦うヒーローになっていったことやアトムを使って原子力の平和利用に利用されたという視点は正しいのですが、やはり原発反対派に対する偏見にも似た物言いには何だこれですね。
myth21hideをググルとわたしのtwitterやblogが出てきます。
ミュウタント 2011.10.04 08:24 編集
ミュウタントさん、こんにちは。
コメントを有り難うございます。武田鉄矢さんの番組で取り上げていたそうですね。鉄矢さんはどういう立場なのか気になるところです。一方、徹さんの方は、中立を装いつつ推進派に利するようなことしか書いていないですよね。二項対立を超えてとか、言葉だけ聞くと説得力があるように感じますが、結局のところ、推進派擁護にしかなっていない。
twitterフォローさせて頂きました。今後ともよろしくお願いします。
gatemouth 2011.10.04 15:52 編集
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