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『わたしを離さないで』(カズオ・イシグロ 土屋政雄訳 早川書房)

2011.05.24(Tue)

『海外文学』 Comment(0)Trackback(0)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)
(2008/08/22)
カズオ・イシグロ

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■映画がもうすぐ公開ということで、話題になっているこの作品なのだが、私的には、なんとも違和感ありまくりの一冊。ところが、ネットなどで検索すると絶賛の嵐。アマゾンのレビューを覗いてみると、この本にはなんと130件ものレビューが寄せられている。それもほとんどが、最高評価の星五つ、残りは星四つで、それ以下というのは皆無。私のようにこの作品の良さが分からない、という評価はほとんどなく、ほぼ絶賛という状況。ブログなどでも高評価で、疑問を投げかけるような記事は発見できなかった。


■で、私の違和感というのは、この作品の状況設定がどうにもこうにも受け入れがたい、ということにつきる。この作品は、ヘートシャムという寄宿制の施設が舞台で、臓器提供を運命づけられたクローンの子どもたちがそこで養育されている。穏やかな環境の下、怜悧な保護官が適切な教育を行っている。そこでの子どもたちの交流、諍い、恋愛、セックス等々、クローンとはいえ、ごくごく普通の子どもたちの日常と悩みが淡々と抑えた筆致で綴られていく。そして、成長するにつれて臓器提供という逃れられない現実が、子どもたちに暗い影を落としはじめる。そんな中で育った、主人公を含む三人の若者たちの交流の顛末を描いたものだ。


■実に哀しく切ない物語なのである。そうとしか感じる他ないような状況が、ハナからセッティングされている。このセッティングされた状況がなんとも受け入れがたい。いくらイギリス社会が非情であったとしても「それはないやろ」、という。あまりにも作家に都合のいいシチュエーションではないか?つまり、読者の涙を誘うメロドラマに誘導するにはもってこいの設定。物語の早い段階で、このような過酷な背景は何となく分かる。そうすると、どうも入り込めなくなる。作家の意図がミエミエで。
twitterでこんなことをつぶやいたとき、ある方が反応してくれて、その方は、作家の「あざとさ」を指摘されていた。そう、あまりにもあざとくないですか?なんとか読者を泣かせたいという作家のエゴだけが際立っている、というと言い過ぎか。


■さらにいうと、普通、こんな状況にある子どもたち、若者たちだったら、まず、反抗し荒れるだろう。それが、健全な精神というものだ。こんな状況で、それを受け入れてしまうというのは、どこか病んでいるとしかいいようがない。デモも集会もなく、政治的な異議申しだてとは馴染みのない、日本のような国ならいざ知らず、学費値上げというだけで、チャールズ皇太子の車が破壊されるような、パンク発祥の国である。それこそ、決死の覚悟で暴れるというのが筋でしょ、と言いたい。
カズオ・イシグロは、そんな状況に置かれた子どもたちの反乱をこそ描くべきだろう。もしくは、思いっきり、グロくナンセンス、そして毒のあるユーモアの物語。それを、お約束通りの悲惨な結末が待っている、メロドラマに仕立ててしまうというのは、あまりにも芸がなく、人間や社会に対する洞察の深みにも欠けるんじゃなかろうか。


■最後にネットで見つけた、これを掲載。2ch「豊崎由美とワンダーランド」http://desktop2ch.net/book/1252594199/
豊崎由美さんは、好きな書評家なんだけど、この件に関してはちょっと首をかしげる。むしろ、佐藤亜紀さんの強烈なつっこみのほうに共感。

<わたしを離さないで 豊崎評>
「柴田さんが現時点での最高傑作と言っている。私もそう思う」
「謎解きといったサプライズで読むものじゃない。 悲しみとはどういったものだろう。その深さを描いたもの」
「どこまで感情移入できるか。最大限の成果をあげている」
「恋愛小説としてもたいへん切ない」
「最後、表紙を見ただけで泣けてくる」
「私の上半期のイチオシ」

<わたしを離さないで 佐藤評>
「日本の市場動向を調査して書いたのかと言うくらいのお涙頂戴ぶりが情けなく」
「受け狙いにちょっとホグワーツ入れて (寄宿舎の餓鬼どものちまちました交流、ってみんな好きだよな)」
「社会性を持たせるべくクローン技術と臓器移植の問題入れて(ネタバレ、とか言わないように。
最初の四分の一読んで、ははん、と思わないなら、小説なぞ読むのは時間の無駄だ)」
「こんなものを読んで感動したと言えるのは、悲しいお話を読んで泣くことを感動と平気で混同できるど素人だけである。」
「世界が異様なくらいちまちまと狭苦しく、そのちまちました迷路の中を、作者によって鼠並みの知能しか与えられなかった 登場人物が右往左往して可哀想な目に遭う話でも平気な方にはもちろん大いにお勧め」


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