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文学ときどき酒 丸谷才一対談集 (中公文庫)

2013.03.27(Wed)

『日本文学』 Comment(0)Trackback(0)

文学ときどき酒 - 丸谷才一対談集 (中公文庫)文学ときどき酒 - 丸谷才一対談集 (中公文庫)
(2011/06/23)
丸谷 才一

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■主に1970年代に文芸雑誌などに掲載された対談集。対談の相手は、吉田健一、河盛好蔵、石川淳、谷崎松子、里見とん、河上徹太郎、円地文子等々。
前半の懐かしい文士たちとの対談がなんとも味わい深かった。時代をタイムスリップしたような、ダラダラと続くのどかな対話がたまらない。
なかでも、吉田健一をめぐる対談が面白かった。冒頭に吉田本人との対談があるのだが、こちらは期待したほどでなく、むしろ吉田の師匠筋にあたる河上徹太郎との対談が面白い。

■吉田健一というと、吉田茂の子息にして母方の祖父が牧野伸顕という名門の出自で、ブルジョアのおぼっちゃんというイメージが強い。父の吉田茂は、高知県宿毛出身の自由民権運動の闘士・竹内綱の五男に生まれた。その後、竹内の親友で、横浜で貿易商を営む吉田健三の養子となる。養父・健三が四十歳で亡くなったとき、十一歳の茂は莫大な財産を相続する。本来なら、健一は大金持ちの御曹司で安穏と暮らせていたはずだった。ところが、河上徹太郎との対談では、こんなふうに語られている。

◇「この養家の吉田家というのは、よく知らないけど横浜の地主で大金持ちだったのが、それをまた茂がみんな使っちゃったんですね」

◇「茂は健一に残すものは何もなかったんだ。で、健一は仕方がないから復員服姿で歩いていた(笑)。つまり、親は子を養おうとしないし、子は親の脛をかじるという気もないっていう、面白い親子なんですね。イギリス風に親子が対等に紳士づき合いをしている」

■こういうのを読むと、吉田健一のそれまでのイメージががらりと変わる。吉田健一という人は、茂の息子ということで、多少の利得はあったにせよ、基本的に筆ひとつで生計を立てた人なのだ。吉田健一という人がぐっと身近に感じられる。また、茂との親子関係も、実にさばさばしていて気持ちいい。
さらに、吉田健一というと思い出すのが、トレードマークともいうべきあの独特の文体である。あの文体について、河上徹太郎はこんな風に述べている。

◇「ぼくはね、健一が死ぬまで、『おい、句読点抜きはよせよ』って言ってたけれども、あなたのご意見はいかがです。健一自身は『源氏物語』みたいに通じる気でいたみたいだけれど、確かに通じますよ。彼はあの文体の暢達には自信があって、それは十分認めます。しかし、読者は時間をとりますね。句読点がない文章というのは。そんな手間をかけては失礼だというのです」

さらに続けて。

◇「健一の奥さんが、『河上さん健一はどうして死んだんですか」って言うから、『そりゃあ句読点を打たないからさ』って言ったんですけどね」

■なんとも、身も蓋もない言いようである。それに対して、丸谷さんは、面白い分析を披瀝する。吉田健一の文筆キャリアを二つに分け、代表作の『ヨオロッパの世紀末』と『瓦礫の中』から後期がはじまるという。そして、その後期以降、句読点が極端に少なくなっていった、と指摘する。さらに、後期が始まる直前に、健一が「もう書くことはない」と言ったことにも注目。不思議なことに、その後期以降、健一は、それこそ「なだれを打ったように」書き始めるのである。そのことに対して、丸谷さんは、次のように語る。

◇「うまく言えないんですが、あの時に、自己表現としての文学という窮屈なものをすっかりすてることが出来たんじゃないかなと思うんですね。それで、芸といってしまうと話が粗雑になるんですが、芸が文学の本質だという感じが非常に出てきて、それであんなふうにコトバが流暢に流れるようになったんじゃないか」

■師匠格である河上さんの忠告にもかかわらず、あの独特のうねるような文体を保持し続け、奥さんが心配するほど書きに書いた晩年の吉田健一。きっと、身体の生理や思考のリズムとあの文体がぴたりとかみ合ったのだろう。作家にとって文体とは、芸風とも言えるのだろうけど、なにより創造性とエネルギーの源泉でもあるのだと、つくづく認識させられた次第。






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