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『阪急電車』(有川浩・幻冬舎文庫)

2011.03.29(Tue)

『日本文学』 Comment(4)Trackback(0)

阪急電車 (幻冬舎文庫)阪急電車 (幻冬舎文庫)
(2010/08/05)
有川 浩

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■しみじみ懐かしい。阪急電鉄今津線、かって中学・高校時代を過ごした逆瀬川や小林の駅がある。60年代後半から70年代初頭にかけての、沿線界隈の情景が思い起こされる。その阪急電鉄今津線を舞台に描かれた連作短編集。私の人生において、最もお馬鹿で騒々しい時代を過ごした特別の土地だ。
世の中には、絵に描いたような瀟洒な家に住み、人も羨むような暮らしぶりの家庭というものが厳然と存在するのだということに、はっきり気づかされたところでもあった。といっても、それがルサンチマンになったり、トラウマになったりということでは全くない。テレビや映画に出てくる華やかな世界がリアルに存在するということに、はじめて気づかされたに過ぎない。それになにより、逆瀬川の自然環境が素晴らしかった。美しい住宅街と自然、それだけでなにやらウキウキした気分になったものである。
その今津線の宝塚から西宮北口までの七つの駅を舞台に、駅名がそれぞれタイトルとなった短編集である。


■西宮北口から宝塚までの今津線で、最も地味で、どろくさい感じだったのが小林だった。どろくさいというと、失礼に当たる、庶民的といったほうがいいのかも。「小林」と書いて「おばやし」と読む。ところが、この小林の駅が本作ではなかなかいい味を出している。やるじゃん小林、みたいな。(逆瀬川の駅と小林の駅のちょうど中間あたりに住んでいたのです。)こんな感じのストーリー。

主人公の翔子がつきあっていた同僚の元カレが彼女を裏切り、翔子の後輩にあたる女性と宝塚ホテルで結婚式を挙げることになる。翔子が彼と別れるときに出したたった一つの条件が、結婚式には必ず招待するというものだった。その結婚式に翔子は、新婦より美しく飾り立て、さらにプロのメイクで花嫁より艶やかないでたちで出席する。同じテーブルには、気の合う社内友達。みな、翔子の境遇にシンパシーを感じている。いきおい、華やかな結婚式でそのテーブルだけが、刺々しい異界を形成している。泣き出しそうな新婦と戸惑う新郎。これが、翔子の考えた新郎新婦に対する復讐だった。
こんな風に書くと、なにやらホラーかミステリーのように暗く重い世界を想起させられそうだが、この作品は、とてもライトにユーモラスに描いていて、そのバランスがとてもいいと思う。


■復讐は、ある種のカタルシスをもたらすものの、同時に自分にも跳ね返ってくる。自分の心をちくちく刺すような小さな痛みをもたらすものだ。そんな翔子の心を解きほぐしてくれたのが、小林の駅とその周辺の風情と人情であった。そんな小林という土地のもつ不思議なよさを翔子にそっと教えてくれたのが、逆瀬川の駅から孫を連れて乗り込んできた時江だった。そして、物語のバトンは翔子から時江と渡されていく。
こんな風に、電車の中でのささやかな出会いによって、物語はリレーされていく。
西宮北口から宝塚までの七つの駅を巡る往復十四の物語。読後感のさわやかないい雰囲気の短編集だ。たまには、なにも考えず、こんな世界に没頭するのもいい。
この作品は映画化されるようで、中谷美紀などが出演するという。多分、中谷美紀は、翔子役ではないだろうか。中谷美紀の翔子を想像しながら読むのも一興か。




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