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「不純なる教養」(白石嘉治 青土社)

2010.08.29(Sun)

『政治・社会・経済』 Comment(0)Trackback(0)

不純なる教養不純なる教養
(2010/04/23)
白石嘉治

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■日本においては、あまりにも当たりまえの常識なのに、世界的に見るとそうはなっていない現実。いろいろあるのだろうが、この本で批判されている、あまりにもバカ高い大学の教育費というのもその一例だろう。世界の趨勢を見ると日本の常識とはちょっと違う景色が見えてくる。例えば、国際人権規約の高等教育の無償化に関するこんな情報。


●「日本政府は一九七九年に国際人権規約を批准したが、大学を含む高等教育の「漸進的」な無償化が定められた条項(経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約〔A規約〕第13条2項C号)留保し続けている。同様に批准を留保し続けているのは、日本以外ではマダガスカルだけである。このきわめて例外的な状態に対して、国連の社会権委員会は2006年6月30日の期日をもって留保を撤回するように、勧告したが今日に至るまで日本政府の回答はない。」


大学の教育費というのは、目標としては無償化するのが望ましい、というのが世界的な流れになっているわけで、そのことに抗っている唯一の先進国が日本政府という事実。マダガスカルとともに孤高の少数意見を頑なに守り続けていのが、世界に冠たる経済大国日本ということだ。(ちなみにマダガスカルは国民総生産世界125位、日本は衰退しているといえども3位)
しかも、大学教育無償化というのは、荒唐無稽な夢物語ではないということも重要だ。OECD加盟30カ国のうち、15カ国が無償、授業料を徴収している国でも、そもそも学費が安い上に奨学金などが充実していて、返済義務のない給付型の奨学金が柱に据えられている。対して、日本は周知のとおり、学費がバカ高いうえに奨学金は100%返済型で、学生をローン漬けにするような貧弱な制度がまかり通っている。もはや、日本の奨学金というのは、むしろ「借金」「ローン」「債務」とも言うべきもので、奨学金などと名乗ること自体がおこがましい。学生では200万円、院生ともなると700万円なんていう「借金」を抱えているものもざらであるということだ。
で、無償化に必要な経費は、2兆5千億と見積もられている。これは、対GDP比で0.5%にあたる。日本の高等教育予算が対GDP比0.5%、OECD諸国の高等教育予算が1%、すなわち、諸外国並みの1%に増やすだけで賄えるわけだ。さらに言うなら、この額はかって銀行破綻の際、りそな銀行を救済するために投入された額に匹敵する。少なくとも、大学学費無償化というのは、荒唐無稽な夢物語でないことだけは確かである。


■ただし、大学をターゲットとした教育の新自由主義的再編という流れは世界的に大きな潮流となってきている。このことは、資本の捕獲対象が有限な自然環境に依拠する実物経済から、金融危機を経て、より抽象的で枯渇することのない資源としての文化や教育へ移行してきていることの表れでもある。そのような攻撃に対して、学生・教員がデモや集会、ストライキなどで立ち上がり、世界的に反撃が開始されている。とりわけ、去年はフランスにおける無期限スト突入をはじめ、世界的に学生の反乱が大きなうねりとなって大学に旋風を巻き起こしたようだ。勿論、日本においてはそのような動きは毛ほどもなかった、ように思う。資本の運動はグローバル化しているのに、反資本主義の動きに関しては、日本はガラパゴス状態ということか?「ガラパゴスは携帯だけにせんかい!」という突っ込みもいれたくなる。
こういう状況に風穴をあける意味でも、もっともっと、世界の反資本主義の動きを広める必要があるだろう。でないと、日本の世界認識、世界の日本認識に齟齬をきたし、またぞろ独りよがりの国になりかねない。この点において、日本のメディアは犯罪的ですらある。


■それにしても驚かされたのが、この本でも触れられている「札幌おもてなし隊」という学生ボランティアグループ。これは、洞爺湖サミットがあったとき行政主導で結成され、日本の文化を知ってもらおうと忍者や和服という装束で、街中でガイド役をかってでたというのだ。確かに抗議行動を起こす学生より、体制に奉仕する学生の方が、ここ日本の空気にはフィットしていそうだが、なんとも寂しい限り。大学無償化の運動に対する、某巨大掲示板のこんな書き込みもここ日本ならでは。


「学費をタダに!!」ってドンだけ痛いんだよ。日本はね共産主義じゃないんだよ。(「2ちゃんねる」二〇〇九年一月二九日)


■という、痛すぎる日本の現実。それに対して、「具体的な方策は?」という点については、この本ではあまり言及されていない。むしろ、大学無償化の原理的な根拠や大学の歴史的な成立過程に宿るサンディカリズムなど、ネオリベラリズムの目指す大学像との根本的な違いを明らかにしていく。
ただ、ちょっと心強いのは、ミュージシャンの小沢健二と作家の笙野頼子という二人のアーチストとしての生き方の例だ。小沢健二は、1998年以来沈黙を守っていたが、今年、13年ぶりの全国ツアーを開始。この間、05年に反資本主義的童話・小説『うさぎ!』を発表。さらに、南米を旅しラテン・アメリカの暮らしを記録した自主製作映画『おばさんたちが案内する未来の世界』を制作、各地で上映会を開いた。反グローバリズムと自らの音楽活動をリンクさせる活動をこれからも積極的に展開していくことだろう。大体、このような先鋭な問題意識を持ったミュージシャンが、今まで存在しなかったこと自体がある意味驚きというか、極めて日本的状況ではあった。
笙野頼子も同様に、作家としての立場からネオリベラリズムと闘ってきた。それは、大塚英二との論争に端的に表れている。大塚は『不良債権としての「文学」』と言い、売れない文芸誌の採算の悪さを漫画雑誌が補ってきたことを指摘した。それに対して、文学に「商品価値」のみを認める見解であり、芸術としての文学に害を及ぼすとして批判してきた。


■思うに、小沢健二などが中心になって、夏フェスばやりの昨今、反グローバリズムの一大イベントが開かれないものか。少数の活動家と大多数の無関心層という分裂状態になんとか楔を打ち込みたい。そのために、小沢のような若者に支持のある人物に一肌脱いでもらうことは、絶大な効果があると思う。日本にも反グローバル勢力がきちんと存在するという、ごくごく当たり前の国へと脱皮するためにも。

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